高専入学から5年、小平さんは見事、九州大学の3年生への編入を果たした。学費は半額免除された。そのころ、祖母は介護施設に入所していたので、福岡県で母と2人で暮らしながら大学に通った。生活費は母の年金と小平さんの奨学金から捻出した。
小平さんは九大で勉学に勤しむにつれ、次第に東京大学の大学院に進学したいと思うようになってきた。そこで、3年生の途中から受験モードに切り替え、東大大学院の過去問題を取り寄せたり、参考書を購入したりして、猛勉強を開始した。
しかし東大大学院の過去問は想像以上に難しかったという。それでも高専のときと同様、わからないことは大学の教授に質問し続けた。
ただ、努力むなしく、東大大学院の筆記試験は「全く手ごたえがなかった」。しかし、結果的には念願の東大大学院に合格した。その理由について小平さんはこう分析する。
「大学院の試験は筆記問題だけではなく、面接や大学教授からの推薦も重要になってきます。高専や大学で研究に打ち込み続けられたからこそ、面接では自信を持って面接官に語れたのだと考えます。また、高専時代同様、私の勉強や研究に対する姿勢を教授に評価してもらえていたのだと思っています」
小平さんは福岡県から埼玉県に母親と引っ越し、東大へ通った。
その後、東大大学院の修了証書を手にした小平さんは、大手IT企業に入社した。今ではエンジニアとしてAIの開発に携わる。会社は福利厚生も手厚く、家賃補助が月8万円もでる。現在は母と東京都内に住み、奨学金を返しながら母を養っている。