食後すぐ磨く、は逆効果
現在では、食後すぐに磨くことは逆効果で、歯磨きの回数よりも、いかにタイミングよく、プラークをコントロールするかが大事と考えられている。
プラークの原因になる細菌が、最も口腔内に増える時間帯は、唾液が減少する睡眠中~朝の起きぬけの間だ。ここで細菌を増やさないようにすることが、プラークコントロールにおいては大切になる。だから、歯磨きするタイミングは、就寝前と、起床時の2回がよい。他の先進国では、このタイミングでの歯磨きが推奨されている。
一方、食後すぐは、食べ物と唾液の流れによって、細菌は最も少なくなっている。細菌の塊(かたまり)であるプラークは、食後8時間くらいから形成され、そのまま歯にくっついていると、食後48時間程度から、がっちりと固着するバイオフィルムが形成される、というスケジュールだ。
プラークは、セルフケアでも落とせるため、食後にあせって歯ブラシで磨く必要はない。バイオフィルムが形成されると、通常、セルフケアでは難しいので、歯科の専門的なケアが必要になる。
食後は、食べ物の影響で、口腔内が酸性に傾いている。特に現代人の嗜好する甘いものや肉類、アルコールなどは、酸性になりやすい。その状態で、研磨剤や界面活性剤などの入った歯磨き粉をつけて歯磨きしてしまうと、歯のエナメル質を削り、粘膜を傷めてしまうことになる。
歯磨き粉は必要ない!?
また、せっかくの唾液を洗い流してしまうのも問題だ。唾液が分泌されていれば、pHを中性に戻し、削れたエナメル質を再石灰化によって修復もし、殺菌もしてくれる。この効果を活かせなくなってしまうのだ。
最近では、市販の歯磨き粉は、積極的に使う必要がなく、使いすぎると害になると考えられている。界面活性剤などの成分で舌の粘膜を傷めると、口臭の原因にもなりかねない。
唾液の力があれば、いろいろと効能をうたった歯磨き粉は必要なく、水だけでブラッシングすれば十分と考えられている。どうしてもつけたければ、少量で十分だ。
食後に大切なことは、口腔内に残ると酸性化の原因になる食べかすを取り除くこと。また、唾液をしっかりと、口腔内や歯間、歯の付け根に行き渡らせることだ。
そのために、食後は、口をすすぎ、歯間ブラシやデンタルフロス、ウォーターピック(口腔水流洗浄器)などを使って、口腔内の食べかすを取り除くことが大切だ。そして、唾液をしっかりと分泌させ、環流させることが重要になる。