アーリーリタイアを目指す努力は老後に報われる

しかも「50歳で1億円」は最低条件です。生活費とは別に、住宅ローンの支払いや子どもの教育資金も必要になります。そのためには50歳段階で、さらに数千万円の上積みがなければいけません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/elwynn1130)

考えれば考えるほど、アーリーリタイアの現実性は低くなってきました。夢を壊すようで恐縮ですが、アーリーリタイアは100年人生時代の働き方としては現実的ではないように思われます。

もう少し考えてみましょう。会社がリストラ施策で「割増退職金」を支払うことがあります。これに「あえて乗ってみる」というのはどうでしょうか。

50歳時点で自主退職し、割増退職金をもらったとします。相場から考えると、本来の退職金に賃金2年分が上乗せされる形になるかもしれません。でも、その上乗せ分は、早期退職後の2年間の生活費にしかなりません。本来、65歳まで働いて得られるはずの収入額を考えれば、「早期退職が得する」とはいえないでしょう。

上乗せ退職金をもらって、すぐに次の会社に再就職できれば、その割増退職金は大きな財産になります。しかし再就職するのであれば、それはアーリーリタイアとは言えませんね……。

▼「前倒しの資産形成」はゆとりをもたらす

アーリーリタイアを目指して資産形成に励む読者を、がっかりさせてしまったかもしれません。しかし、その取り組みは決して悪いことではありません。アーリーリタイアという目標に向かっていた人は、そうでない人に比べて相当のハイペースで資産を形成できているはずです。

65歳以降の老後に向けて資産を形成するといっても、ゴールが遠いためにモチベーションが続かず、手つかずの人も多いのが現実です。その状況を放置していれば、65歳を迎えたときに、「老後の準備は、退職金くらいしかなかった」ということになります。

こうした世帯に比べて、アーリーリタイアを目指して励んだ人のセカンドライフは段違いなはずです。50歳リタイアはできなくても、60歳リタイアなら、実現できる人も多いでしょう。65歳までの2500万円(年間支出約500万円×5年分)の資産と、65歳以降のために2500万円の計5000万円が準備できれば、「60歳引退」は十分に可能です。

もちろん65歳引退となった場合は、さらに経済的なゆとりをもって老後をエンジョイできます。「50歳引退は無理だったが、同期と比べてわが家の旅行予算はほとんど制限かけずに計画できる老後になったな。今年はどこへ行こうか」と笑顔で話せる老後になるはずです。「夢のアーリーリタイア」を考えることは、きっとムダにはならないことでしょう。

(写真=iStock.com)
【関連記事】
定年後に"趣味の飲食店"を始めた人の末路
7500万円タワマン買う共働き夫婦の末路
定年後を充実させる「定年準備」の6カ条
定年までに1億円貯めるにはどうすればいいのか
「老後の備えは300万の定期預金で十分」のワケ