「ホームレスには怒っちゃダメなんです」
41歳のとき、母親と喧嘩をして家に帰りたくない時期が続きました。最初は新宿のサウナで寝泊まりしましたが、どんどん金がなくなり、あてがなくて、板橋の文化会館の前を深夜トボトボと歩いていたら、カップ酒を飲んでる2人のホームレスがいました。
タバコを吸いながら立ち話していると仲良くなってコンビニの廃棄弁当を食わしてくれたんです。これが本当にうまかった。ああ、タダで食べられるんだ、と驚いたんです。家賃もないし、こりゃあ一回やったらやめられねえ、と。
「一緒に雑誌を拾おう」と持ちかけられ、住宅街で雑誌や漫画を見つけて古本屋に行きました。百科事典は1冊3000円で売れました。結果、新宿・歌舞伎町でホームレスになり、今に至ります。
喫茶店の想いは捨てていませんが、まずは信用とお金を貯めないといけないなと思ってます。ホームレスはとにかく感情的になる人が多い。繊細なんです。今はほかのホームレスに仕事を紹介しているのですが、ホームレスには怒っちゃダメなんです。みんな人生を投げ出している人ばかりだから、そういう人たちに対して常識は通用しません。ホテル時代の話からもわかるように、私はすごい短気だったんですけど、仲間のホームレスたちを信頼して随分と優しくなりました。
脱サラして独立したいという方には、その意思をしっかり貫くことが大事だと言いたいです。私は結局パチンコに行くのをやめられなかった。これまで何かを貫けていた人は独立して成功するタイプなんじゃないかなと思います。
▼キャリアコンサルタント・谷出正直さんの視点
「独立して喫茶店をやりたい」という想いが、明確でなかったことが要因です。
「願望は強い。意思は弱い」と言われます。人間は易きに流れるので、喫茶店開業に向けてやるべきことをやらないといけないと思いながらも、楽しいこと、楽なこと、欲求に流れてしまいます。
ビジネスをうまく立ち上げ、継続するためには周囲の協力は不可欠です。一番の協力者になるのは身近な人です。つまり家族や大変なことがあっても最後の最後まで一緒に頑張ってくれる仲間です。その人との関係性を大切にすることも重要になります。