日常生活のなかで自分でできることを増やし、お金への依存度が減ったんだから、貯金はなくてもいい、とは思いません。不測の事態に備えて、多少の貯えはあったほうがいいに決まっています。私も少ないながらも貯金があったことで、屈託なく隠居生活を楽しむことができました。

大原扁理『なるべく働きたくない人のためのお金の話』(百万年書房)

経済的な不安を軽減する方法が複数あるなら、どれかじゃなくて、自分にできるものは全部選べばいいと思います。でも、貯金っていくらあればいいでしょうか。

これは最低生活費を目安にすると便利です。私の場合はひと月6万円あればOK。

何カ月ぶん貯金しておくかについては、不測の事態の内容によります。これは予測できないから不測の事態なので、すべてに対応するのはムリです。なのでとりあえず、このご時世、現実に起こり得ることを何かひとつだけ想定しておくといいです。たとえば突然アルバイト先の店がつぶれて、収入が途絶えたとか。

過去の経験から、新しいアルバイトを探して、面接に行き、採用され、働き始めるまで私は最短1週間、平均では3、4週間くらいです。なのでうまくいけば2カ月目には働き始め、3カ月目に初めての給料がもらえる。ただし、初めの1カ月は研修だったりして時給も安いし、本格的に働けるのはその次の月からという場合が多い。すると解雇されてから4カ月目にはきちんと収入が立て直せそう。では最低生活費の4カ月ぶん、でもギリギリでは怖いので半年分くらいの貯金があるといいかも。とすると6万円×6カ月で36万円。

こんな感じでけっこう適当に決めたのですが、6年間の東京での隠居生活のあいだはおかげさまで、半年ぶんの貯金で困ったことはありませんでした。

必要な金額がわかっていれば不安にならない

自分に必要な金額がハッキリしていると、いたずらに不安にならずに済みます。そして最低生活費が低ければ低いほど貯めるのが簡単になるので、普段からお金がかからないに越したことはありません。

いずれにしても、欲を言えばキリがないので、私が貯めるべき貯金のラインはここまでと決めたら、あとは仕方ないと割り切ることにしています。

では、どのように貯金をしたかというと、実は貯金をしようとがんばったことがありません。なのでコツを聞かれたら困ってしまうのですが、貯金は結果的に貯める、というのがストレスもなくて、ラクな方法だと思います。

私の場合、貯金のために何か特別なことをするというよりは、ひたすら自分の快適な生活を固めていったら、余剰金が貯金になってちまちま増えた、というのが実情でした。

なので私の貯金のコツがあるとしたら、貯金を目的にするよりも先に、自分にとってのよりよい生活を追求していくこと。すると、何かを犠牲にしたり、我慢したりすることなく、生活の副産物として貯金が増えている。目標貯金より結果貯金、という感じでしょうか。