私は東京で隠居していた6年間、民間の保険には入っていませんでした。
はじめこそ、やはりケガや病気のときなど、保険に入ってないと生きていけないんじゃないかと思っていましたが、はたして本当に生きていけないのか、いろいろ調べてみたんです。
仮に病気になり、治療費が100万円かかったとします。
まず日本には国民皆保険がありますし、私も加入していますから、かかった医療費の3割の負担で治療が受けられます。ですから自己負担額は30万円。30万円といえば、私の貯金のほぼ全部です。払ったらその後の生活ができません。
そこで、高額療養費制度も使うことにします。これは標準報酬月額という所得区分によって自己負担限度額が決まっていて、それを超えたぶんの治療費はあとから払い戻しをしてもらえる、という制度です。
東京時代の私の月収は7、8万円ですから「低所得者」で、年齢的には「70歳未満」の区分に入ります。この場合は、自己負担限度額は3万5400円。
これなら少ない隠居の貯えでも、民間の保険に入らずになんとかやっていけそうです。
「保険がなければ生きていけない」不安は本当か
ただし、認められるのは同1月(1日~末日)にかかった医療費ですから、入院や通院が月をまたぐと2カ月ぶんの自己負担額を払う必要があります。
また、利用するには役所での手続きがありますし、払い戻しまでに審査で3カ月程度待たなければなりません。その間、お金が足りなければまた別の貸付制度を借りる必要もあり、正直かなり面倒くさいです。
緊急時にキャッシュレスで治療を受け、万全なサポートを受けるなら、民間の保険には遠く及びませんが、私はそんな贅沢をできるほどの収入がありません。しかし公的な保険だけでも、あると知っているだけで安心感が上がります。
だからといって、毎日飲み歩いて身体を壊しても保険を使いまくればいいとは思わないので、自助努力で維持できる健康は、自分で維持するのは基本的な話ですが。生きていけないという不安が本当に当たっているのか、時には疑ってみることも必要です。
※数字や区分は2018年6月現在のものです。「高額療養費制度」については、私がここ数年観察しているかぎりでも、区分が多様化し、低所得者の自己負担額は下がっています。ありがたいことです。