中高年男性は自ら望んで長時間労働をしていない

【3:年齢を経ても副業・兼業で新たなチャンスを獲得】

調査では、中高年男性の「労働価値観」についても聞きました。何のために働くことが重要か、という点を尋ねたのです。その際、現在の労働価値観だけでなく、過去の就職活動時点での価値観を想起してもらい、比較できるようにしました。

筆者の3月に上梓した最新著『女性発の働き方改革で男性も変わる、企業も変わる』(経営書院、井熊均監修)

その結果、「出世昇進のために働くことが重要だ」という設問では、約30年前の就職活動時点で「強くそう思う」「そう思う」と回答した人は全体の約3割でしたが、アンケート回答時点(2017年)では約2割まで減っていました。

その一方、「自分の能力やスキルを活かすために働くことが重要だ」「自己成長のために働くことが重要だ」という設問では、「強くそう思う」「そう思う」との回答が過去と現在のいずれも約5割で、年齢の上昇やライフイベントの変化があっても、仕事に対してやりがいを求める気持ちは変わらないことがわかりました。

ところが、企業はその意欲やスキルを必ずしも生かせているとは言えません。再雇用の場合には、仕事の内容や裁量を限定的とする企業が多いようです。

また、「給与と働く時間が調整できる場合、どれくらいの時間を割きたいと思っていますか」と尋ねたところ、「業務時間を減らして(週3日以内)副業・兼業をしたい」と回答した中高年男性は約4割でした。さらに「休日や退社後の時間まで副業・兼業をしたい」という回答を含めると、副業・兼業に挑戦をしたい中高年男性は約6割に上ります。給料が減っても、副業・兼業に挑戦したいと考える中高年男性は少なくないのです。

こうした中高年男性の意欲を生かすためには、副業・兼業の解禁を進めることが重要です。副業・兼業は、起業や転職に比べると経済的なリスクが低く、今までの経験やスキルを社外で活かせる可能性が広がります。

▼「働き方改革」は子育て世代や女性のためだけのものではない

いつまでも会社から帰ろうとしない中高年男性は、「働き方改革」の抵抗勢力として見られることが多かったのではないでしょうか。ところが、中高年男性は自ら望んで長時間労働をしているわけではありません。「働き方改革」はそうした働き方を変える契機になるはずです。

「働き方改革」は子育て世代や女性のためだけのものではありません。中高年男性にとっては、本当に自分が望む働き方、家族(夫婦など)との関係、私生活のあり方を考え、人生設計を必要に応じて組み立て直せることに、働き方改革の意義があると考えます。

(写真=iStock.com)
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