その後、妻の額面年収が増えるにつれ世帯手取額も少しずつ回復していくが、額面年収129万円の水準まで戻るのは、妻の額面年収が153万円に達した時点だ。世帯手取額から考えると、妻の額面年収が130万円から153万円未満までは、働き損のゾーンといえる。

一方で妻の勤務先が大企業の場合には、額面年収が106万円以上になると妻自身に社会保険料の負担が生じる。働き損のゾーンは額面年収106万円から124万円未満までだ。

また、妻の勤務先を中小企業と大企業で世帯手取額を比較すると、妻の額面年収が106万円から129万円までは、中小企業のほうが多くなる。働くなら中小企業のほうがお得かもしれない。

「もう1つ注意しなければならないのは、夫の会社の手当です」

人事院の職種別民間給与実態調査(平成28年)によると、家族手当制度のある会社は全体の76.8%。配偶者に家族手当を支給する場合には、年収制限を設けるケースが多いが、103万円としている場合が65.9%。次いで130万円が29.5%となっている。月額1万円としても世帯収入額に12万円の差が生じる可能性がある。

「妻が社会保険料を負担することで、将来受け取れる年金額がアップするといういい面もあります。その点も留意し検討してください」

夫の扶養範囲であれば、将来受け取れる年金は老齢基礎年金(国民年金)のみ。しかし、妻が厚生年金に加入すれば、老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金も受け取り可能だ。また、障害状態になったときに受け取れる障害年金にも差が生じる。夫の扶養範囲であれば障害基礎年金の対象だが、自分で厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象となり、給付額がアップする。将来的なリスクも視野に入れ、働き方を選びたい。

注1:大企業は、従業員数(被保険者)が501人以上で一定の条件を満たす企業を示す

宇梶 精一
税理士。大学卒業後、大手税理士法人に勤務。2002年税理士登録。08年渋谷税理士法人を設立、代表社員に就任。企業顧問、富裕層向けの相続対策など、現場を重視したコンサルティング姿勢に定評がある。