舌の活躍なくしては飲み込めない

80歳になっても歯を20本以上保とうという8020(ハチマルニイマル)運動の達成者率は、「平成28年歯科疾患実態調査」によれば51.2%です。しかし、上下の歯がそろっていなかったり、噛み合わせが悪かったりすると、せっかく歯が20本残っていてもうまく食べることができません。

実は私の患者さんの中に、歯が1本もなく、歯茎だけで食べているのに栄養状態が良好な人がいます。不思議でしょう? なぜかといえば、その人は咀嚼力があり、嚥下(えんげ)機能がしっかりしているから。

口の機能は歯の本数だけでは決まらないのですね。唇から歯、舌、飲み込みまで、トータルで評価するべきで、滑らかに動く舌の活躍がなければ、食べ物を食道に送ることもできません。

私たちはご飯を食べながら、水や汁物を飲みながら、息を吸ったり吐いたり、おしゃべりもする。特に意識することもなく、いくつものことが同時にできる「口」を改めてすごいとは思いませんか?

そして、それにかかわるのが、口を動かす筋肉量、筋力なのです。

口はあなたの通信簿

「この前、歯医者に行ったのはいつだったろう?」

こんな人はオーラルフレイルの黄色信号です。

「口はその人の通信簿」「歯はインテリジェンスの表れ」ともいわれ、口を見れば、あなたが健康意識が高い人かどうかがわかります。かかりつけの歯医者を持ち、歯が痛くなってから駆け込むのではなく、年に3~4回は、歯の定期検診を受けましょう。そのときに、虫歯や歯周病だけではなく、口臭がないか、噛みあわせが悪くないかも見てもらい、「そういえば……」という気になることも相談しましょう。