客員研究員が「専従」に当たらないのは自明

知事は平成30年1月24日の記者会見において、研修派遣をめぐる派遣された医師の認識として以下の3点を指摘している。

1.外部機関でなくても、がんセンターで同じ期間従事すれば責任医師の資格要件を満たすことができる。
2.研修を命じられた外部機関には過去に3カ月以上研修に行っており、また、そこでの客員研究員としての経験年数も2年以上ある。
3.先進医療の申請書に経験年数を2年間と記載したのは、客員研究員としての経験年数も含めて記載したものである。この件については、当該外部機関に確認した上で記載した。

厚生労働省の提示する、先進医療における重粒子線治療の実施責任医師の資格要件を表に示す。

【主として実施する責任医師】
・専ら放射線科に従事し、当該診療科について十年以上の経験
・放射線科専門医であること
・当該療養について二年以上
(放射線治療(四門以上の照射、運動照射、原体照射又は強度変調放射線治療(IMRT)による体外照射に限る。)による療養について一年以上の経験を有する者については、一年以上)の経験を有する
・当該療養について、当該療養を主として実施する医師又は補助を行う医師として十例以上の症例を実施しており、そのうち当該療養を主として実施する医師として五例以上の症例を実施
厚生労働省「第42回先進医療技術審査部会 資料5-1 粒子線治療の取扱いについて」(平成28年5月19日)より

厚生労働省が示す「専ら○○に従事する」とは専従する意味であり、通常勤務時間の80%以上を当該療養に従事するとされている。

「重粒子線治療の施設基準の概要」の「主として実施する責任医師」と、「専従、専任、常勤」とを照らし合わせれば、実施責任医師の最初の項目に、「専ら放射線科に従事し、当該診療科について十年以上の経験」との記載があり、「当該療養について二年以上(中略)の経験を有する」とは当該療養に専従する期間が二年と理解できるのである。

当該医師も申請書に二年の経験と記載していることからも、「放射線治療(四門以上の照射、運動照射、原体照射又は強度変調放射線治療(IMRT)による体外照射に限る。)による療養について一年以上の経験を有する者については、一年以上」は必要であることと理解していたと考えられる。

知事は、「先進医療の申請書に経験年数を二年間と記載したのは、客員研究員としての経験年数も含めて記載したものである。この件については、当該外部機関に確認した上で記載した」と説明しているが、客員研究員が「専従(80%以上)」どころか「専任(50%以上)」にも当たらないのは自明であり、知事の説明は詭弁と言える。

この行為は明らかに公的名称の詐称

さらに、当該外部機関とは当該医師と大川伸一元病院長によれば「放射線医学総合研究所」とのことであるが、先進医療における重粒子線治療の実施責任医師の資格要件の判断をするのは厚生労働省である。次項で述べるが、当該医師が実施責任医師としての資格を満たしていないことは、厚生労働省関東信越厚生局神奈川事務所に確認している。

平成28年4月に当該医師は重粒子線治療の経験年数を7月と訂正し、自らも実施責任医師の資格はないと認めたにもかかわらず、その後、以下の3つの「臨床試験計画書」に神奈川県立がんセンターの実施責任医師として記載させていた。

・臨床試験計画書 J-CROS 1505 平成28年4月28日作成(群馬大学医学部附属病院放射線科、放射線医学総合研究所重粒子医科学センター)
・臨床試験計画書 J-CROS 1502 平成28年12月19日承認(放射線医学総合研究所病院)
・臨床試験計画書J-CROS 1509平成29年1月17日承認(放射線医学総合研究所病院)

理事長の私が再三にわたり注意したにもかかわらず、掲載し続けたこの行為は明らかに公的名称の詐称である。研修期間のサバを読むなどという行為は、県民に対して安全な医療の提供をするとの視点からは信じられない行為である。