3社と戦うには10年単位での時間が必要

そもそも、日本にはかつて、いくつもの「第4のキャリア」が存在した。古くはツーカーセルラー、最近ではイー・モバイル、ウィルコムといったところだ。いずれも「通信料金の安さ」を売りにしたが「全国津々浦々でつながらない」という弱点を持ち、結果的に会社は消滅していった。日本人は携帯電話に、安さよりも「どこでもつながる」という安心感を優先するのだ。

かつてソフトバンクが携帯電話事業に参入したときも、孫正義社長は「国民のために安い料金プランを提供する」と息巻いていた。その後、確かに他社よりも圧倒的に安い料金プランであったが、思った以上にドコモやKDDIからユーザーが流入することはなかった。

当時のソフトバンクは「安くてもつながらないのでは使い物にならない」として敬遠されていた。ソフトバンクが安価なホワイトプランに加えて最初にアイフォーンの独占的販売権を手に入れても、いまだにドコモがトップシェアなことを考えると、日本人がいかに保守的なのかがよくわかる。

いまの日本市場は、携帯電話事業者間の顧客獲得競争は終焉を迎えている。総務省が、キャッシュバックやスマホの実質0円販売に規制をかけたため、大手3社間でのユーザーの争奪戦が収束したのだ。楽天が大手3社と互角に戦えるようになるには、全国にネットワークが整備され、3社よりもはるかに安い料金を提供し、人気機種を揃えられるようになってからだろう。その環境が実現できるのは、10年単位での時間が必要で、それまで楽天の体力が持つかが心配にならざるをえない。

(写真=時事通信フォト)
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