せめて週末くらいはたっぷり寝よう……。そうした考えは禁物だ。体内時計と生活時間の間にズレが生じると、仕事のパフォーマンスが下がったり、肥満の原因になったりする。中にはガンの発生率を上げるという研究結果もあるという。専門家が『社会的時差ボケ』と呼ぶその現象とは――。
※本稿は、伊藤和弘・佐田節子著、三島和夫監修、『疲れをとるなら帰りの電車で寝るのをやめなさい』(日経BP社)を一部再編集したものです。
平日は朝も早いし、睡眠も不足ぎみ。せめて週末くらいはたっぷり寝よう……。そんなふうに考えている人は少なくないだろう。しかし、土日にたっぷり寝たはずなのに体調はイマイチで、特に休み明けの月曜日がつらい、なんてことはないだろうか。
実は“週末朝寝坊”には落とし穴がある。それが「時差ボケ」だ。江戸川大学社会学部教授の福田一彦さんに聞いた。
「平日は規則正しい早寝早起きの生活でも、週末に夜更かしや朝寝坊をして就床時刻や起床時刻がずれると、それをきっかけに体内時計が乱れ、時差ボケのような症状を招いてしまいます。このような状態は『社会的時差ボケ(Social Jetlag)』と呼ばれ、近年、睡眠研究者らの間で注目されています。週末だけの乱れと軽く考えがちですが、体への影響は決して侮れません」
科学的に証明されている「時差ボケ」の害
そもそも時差ボケとは、体内時計と生活時間との間にズレが生じ、眠気や食欲不振、集中力低下などの体調不良を招くこと。時差の大きい国への旅行や出張にはつきものだが、日常生活の中でも十分起こり得る。その原因が睡眠時間の乱れというわけだ。
典型的なのが、夜勤などのシフトワーク(交代勤務)だ。これまでの研究で、シフトワーカーでは睡眠障害だけでなく、がんや肥満、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、狭心症などの虚血性心疾患、うつ病などのリスクが高まることが分かっている。これも体内時計のズレが大きな原因といわれている。