「例えば、がんの場合、シフトワーク自体に発がん性があると見なされています。世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関(IARC)が発がんリスクのランク分けをしていますが、シフトワークは上から2番目のグループ2Aに位置付けられています。これは『人に対する発がん性が考えられる(Probably Carcinogenic)』というものです」

また、社会的時差ボケが進むほど、肥満の指標になる体格指数(BMI)が高くなり、この傾向は特に太った人ほど顕著だったという報告もある(※注1)

「週末だけ寝坊」でも予想外の悪影響が

シフトワークほど深刻ではないが、夜型生活や週末朝寝坊でも社会的時差ボケによる心身の不調が起こりやすくなる。

「社会的時差ボケ状態では、頭の働きの低下、昼間の眠気や抑うつ傾向の増加が見られるとの報告もあり、仕事のパフォーマンスも低下してしまいます」

実際、社会的時差ボケが大学生の学業成績に関係するとの報告もある(※注2)

また、こうした問題は、大人だけに限ったことではない。福田さんらは1~5歳の子供がいる全国1000世帯を対象に、子供の睡眠や食事などの生活習慣、心身の症状などについて答えてもらい、生活パターンとの相関を調べた。その結果、「週末朝寝坊の影響が思った以上に大きいことが分かった」という。

この調査において、生活パターンは「超夜型」「夜型」「やや夜型」「早寝早起き」「週末朝寝坊」の5グループに分類された。このうち朝の不機嫌さや体調不良、風邪の引きやすさなどの不調の度合いが最も大きかったのが、「超夜型」組。逆に、症状が最も少なく健康的だったのが、「早寝早起き」組だった。

ここまでは予想通りの結果なのだが、予想外だったのは「週末朝寝坊」組だ。このグループは、平日は早寝早起き組と同じ理想的な生活を送っているにもかかわらず、朝の不機嫌さや風邪の引きやすさの程度が、「やや夜型」組よりも高かったのだ。

「どのグループも週末は平日に比べて起床時刻や朝食時刻が遅くなる傾向がありますが、週末朝寝坊組は特にそのズレが大きかった。中でも朝食時刻のズレが大きく、11時ごろに朝昼一緒のブランチをとっている家庭もありました。朝食は朝の光を浴びることと並んで、体内時計をリセットする重要な役割を担っています。週末朝寝坊組は、朝寝坊にブランチが加わることで体内時計の乱れが一層進むと考えられます」