明治維新から150年。「プレジデント」(2018.2.12号)の特集「仕事に役立つ『日本史』入門」では、明治の大富豪から名将の生き方、伝統会議まで、気になる日本史の知恵を集めました。幕末・明治に生まれた偉人たちから私たちは何を学び取るべきか。担当編集者がポイントを紹介します。
「後輩が自発的に動いてくれない……」
とある新年会。33歳、メーカー営業マンの彼は後輩のマネジメントで悩んでいました。
「時間をかけて言葉を尽くしても伝わっている気がしない。最近の若者は何を考えているかもよく分からない」
ついこの間まで若者として扱われていたアラサー社員が若者を理解できないのであれば、さらに年齢の離れた部課長以上にはなおさら難しいでしょう。どうすれば若者の心をつかむことができるのか、人を動かすことはできるのか――。
そんな想いを抱えながら、今回の特集で元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎さんと歴史作家の河合敦さんに「幕末・明治のリーダー学」について対談いただきました。
河合さんが「最も幕末で注目する人物は?」という質問を投げかけると丹羽さんはこう言いました。
「西郷隆盛です。背中で語る人物といいますか。その生き方を見て、若い人たちが心酔していたように思います」
今度は丹羽さんが「西郷の魅力はどこだと思いますか?」と問いかけると河合さんは少し考えて答えます。
「イギリスの外交官アーネスト・サトウが、『その瞳は黒いダイヤモンドのように輝いていた』と西郷を表現しています。彼自体が大きな一個の要石だったと思います。薩摩の武士は寡黙でしたが、西郷はとくにそうでした。徹底的に聞き役にまわったそうです。大きな身体で正座をしながら相手の話を熱心に聞き入る西郷。ときには話を聞いて涙を流したといいます。すると『あの西郷さんが、自分の話を聞いてくれた』というので、若者たちはみんな心酔してしまうのです」
キラキラ輝いた目で親身になって話を聞いて涙する。それほど西郷はピュアで実直な人柄だったのでしょう。