なぜ医者は寿命が短くなりやすいのか
ストレスのほかに、寿命に影響を与えるもうひとつの要因は「身体的負担」です。
IT企業にはちょっと太めの人が多く、不健康な兆候が見られます。たとえばSEは1日中座ったままパソコンのキーを打っていて明らかに運動不足。キーを打つだけでなく、不得意なプロジェクト管理を任されてメンタル的にも追い込まれるケースが増えています。メタボの場合にはメンタル不調や、がんなどの病気を誘発しやすく、寿命が縮む可能性があるので要注意です。
パイロットやCAで心配なのが気圧の変動と時差の問題です。どちらも疲労が体に蓄積されやすい。CAは飛行機の中でずっと立ちっぱなしですから腰を悪くする人が多いのも気になるところです。
医者も寿命が短くなりやすい職業です。仕事時間が不規則で長時間労働の傾向があって睡眠時間が短いので、メタボになりやすいし老化も進みやすい。同様に介護職員も過剰労働気味で寿命を縮めるリスクがあります。とくに夜勤がある人で仮眠が足りない人は危ない。夜勤でも2時間程度はしっかり仮眠をとることで健康リスクが減ります。
医療関係者は概して過剰労働で健康を害するのですが、一般の人も働きすぎは体によくありません。最近増えているのが、自宅で親の介護のために夜しっかり眠れないまま、フルタイム勤務で健康を害するパターン。睡眠時間が短くなると血圧が上がり、心筋梗塞や脳梗塞、うつ病の危険性も増えます。
どんな社会的地位にあっても、職業に就いていても、血圧とコレステロールが高く、肥満気味の人は要注意。太い血管が詰まり、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。命は取り留めても半身不随になる、言葉が話せなくなるといった障害に悩む人もいます。いきいきと働くためには生活習慣を整え、早期からのケアが必要です。
亀田高志
医師
健康企業代表。1991年産業医科大学卒業。日本IBMなど大手外資系企業、日本企業での産業医を11年間務める。2006年に産業医科大学が設立したベンチャー企業の創業社長に就任。16年に退任、現職。近著に『健康診断という「病」』。
医師
健康企業代表。1991年産業医科大学卒業。日本IBMなど大手外資系企業、日本企業での産業医を11年間務める。2006年に産業医科大学が設立したベンチャー企業の創業社長に就任。16年に退任、現職。近著に『健康診断という「病」』。
(構成=大下明文 写真=iStock.com)