開発チームの高岡悠人氏は足しげく子どもたちの遊びの現場に通う。「よう! どう最近? 元気?」とタメ口で小学生に溶け込んでいく私服の彼を、何者か怪しむ者はいない。やたら「ベイブレード」に詳しいお兄さんという認識で、最近の小学生の日常生活や流行っていることを教えてくれる。自分自身、「中身的にもほとんど子ども時代から成長していない」と笑う彼は、現場の子どもたちに溶け込むことで、数値として上がってこない危機情報の機微も吸い上げていく。少年たちが読むのはコロコロコミック、見ているテレビは、ピラメキーノ、世界の果てまで行ってQ。携帯電話はあまり持っていない。そのようなことをさりげない普通の会話で聞きだしながらクラスの子たちが最近「ベイブレード」から離れて別の遊びに行った情報や、塾やスポーツに移行していった話などを聞きだすのだ。

「最近の子どもは本当に忙しい。学校に行って塾や習い事に行って、DSやって『ベイブレード』やって、カードゲームやって。膨大な選択肢の中から『ベイブレード』を選んでもらうためにはどうしたらいいのかを考えています」

その作戦の一つが先のWBBAであり、毎月行われる公式試合である。玩具を与えて「はい、これで自由に遊んでね」と放置するのではなく、対戦場所を用意することで子どもたちに遊ぶ場をも与える。会場となるのは公式ショップである街のオモチャ屋さんだが、大会告知のポスターや景品などはタカラトミーが念入りに用意する。多い場所0人もの子どもたち75人のため、抽選のために別種のトラベントを催したり、店内に常に子どもが自由に無料で遊べる「ベイ太」と呼ばれる機械を置くこともある。このような地道な戦法は、タカラトミーを象徴する営業方法ともいえる。