できる人だけやればいい。私は降りる

以前、週刊ポストで「ちょいワルオヤジ」こと岸田一郎氏が、老いてもモテる秘訣(ひけつ)を語っていた。それをネットに展開したときの記事タイトルは『「ちょいワルジジ」になるには美術館へ行き、牛肉の部位知れ』になった。岸田氏は肉の部位についてこう提案する。

<牛肉の部位を覚えておくのもかなり効果的。たとえば一緒に焼き肉を食べに行ったとき「ミスジってどこ?」と聞かれたら、「キミだったらこの辺かな」と肩の後ろあたりをツンツン。「イチボは?」と聞かれたらしめたもの。お尻をツンツンできますから(笑い)>

そして、こう締める。

<いまの50~60代というのは生まれながらにして経済的に恵まれてきた“奇跡の世代”。若いうちからいろいろなモノや遊びに触れてきて、造詣が深いのだから引っ込んでいたらもったいないですよ。もっと自信を持って「ちょいワル」を目指してほしいと思います>

ここに引用した部分のほか、記事にあった「美術館で若い女性をナンパし、薀蓄を語れ」のくだりがネットで猛烈に反発をくらった。しかし、岸田氏がモテのためにさまざまな努力をし、惜しまずにカネを使ってきたことは、よくわかる記事だったのではないだろうか。そうした取り組みを通じて、岸田氏は自身の魅力を磨いていったのだろう。何かの道をやりきっている、という意味では素晴らしいと思う。ただ、私にはまねできない。

27歳で「モテから降りる」ことにして、かれこれ17年。それによりいろいろな無理がなくなった。今日も同じ格好をして、同じ安居酒屋で酒を飲んでいる。それで十分、ラクで幸せな人生だ。

【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・「モテから降りる」と決断するだけで、人生はグンと生きやすくなる。
・世間で語られるモテ要素から距離を置き、自然体でラクに生きるようにしたら、急にモテるようになることもある。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。
(写真=iStock.com)
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