男女平等が常識のはずの現代日本で、なぜか減らない「男を立てる」女たち。エッセイストの酒井順子さんは、彼女たちを「男尊女子」と名付けた。なぜそうなるのか、男には見えないその切ない事情とは――。

つい自分から「男尊女卑」的な行動に

『男尊女子』(酒井順子著、集英社刊)

「男尊女子」という新語が、このところ話題になっている。頭では男女平等がいいと思っていながら、つい自分から「男尊女卑」的な行動を取ってしまう女性をさす言葉で、エッセイスト・酒井順子さんの同名の新著がその原典である。

ビジネスの現場で言えば、男性と組んで仕事をするとき、つい1歩引いたスタンスを取ってしまう。管理職の肩書もついているのに、会議の席で上座に座ることをためらう。接待の席であればついお酌をし、かいがいしくサラダを取り分けたりしてしまう……。

「何%ぐらいの女性が『男尊女子』なのかと聞かれることがありますが、基本的にはほとんどすべての女性の中に、程度の差こそあれ同じような感覚があるように思います」と、酒井さんは言う。あなたが今いる職場でも、もちろん日々同じことが起きているはずだ。

男尊女卑が時代錯誤とほぼ同義語といえる現代の日本で、なぜそんなにも「男尊女子」があふれているのか。酒井さんはその経緯として、3つのパターンを挙げる。

24時間365日、男側の「願望」を読む

まずは「染み込み文化」型の男尊女子。

学校や社会はもちろん、子供時代からの親のしつけなどを通して、「男を立てる」「女は1歩下がる」的な感覚を、長い時間をかけて身につけてきたケースだ。

「人によって濃い薄いの差はあると思いますが、疑問を感じる前に体の中に入っている感じでしょうか。人に会ったらお辞儀をするというのと同じぐらいに、作法として染み込んでいるわけです。私自身、自分にはあまりないと思っていたのに、就職したときに意外とそういう部分があるんだと気づいた経験があります」