簡単な行為の連続で成功体験を重ねる

このような経験はないだろうか。出社ギリギリに起きて、10分も歩かずに電車に乗り会社に向かった結果、思考はボヤけてやる気は起きず……。この原因は、脳のウオーミングアップが十分に行われていなかったからだ。

築山氏はモチベーションを高めるため、出勤前に次のような、脳の運動系を刺激する習慣を持つことを勧めている。

・ウオーキング
  ・部屋の片付け
  ・挨拶+ひと言、音読

大脳生理学的に見ても、これらの行為は理にかなうという。運動系の機能は脳の表面中央付近に分布していて、その脳領域を働かせることは、それまでに至る脳の血流をよくすることも意味するのだ。

「特に足を動かすための機能は頭頂部に近い部分が担っているので、ウオーキングをすることで血液が脳の高いところまで汲み上げられ、結果的に脳全体にも血液が巡りやすくなります」

部屋の片付けは手の運動であると同時に、前頭葉が司る選択、判断の機能を強化。挨拶にひと言を付け加えることは、単に口を動かすだけではなく、前頭葉を使い言葉を組み立てる、耳を使い情報を取得するといった脳の活性化に繋がる。音読には、脳の入力→情報処理→出力という要素が連続的に含まれているので、適度な脳の刺激に向いているという。

さらにこれらの行為は、感情や理性、創造、やる気や行動力など、人間の精神活動に欠かせない大脳辺縁系や前頭連合野を繋ぐ、「A10神経」も刺激。全脳の活性化を促すので、モチベーションを高めるウオーミングアップに最適なのだ。

単純な行為であることも理由がある。アスリートが複雑・高度な動作からウオーミングアップを始めないのと同じで、脳も複雑なことからトライすると、頭が適応できないのだ。

「複雑なことにトライして失敗するとウオーミングアップ効果が得られないばかりか、ネガティブな気持ちに陥る危険性があり、これでは本末転倒。簡単な作業を通じて成功体験を積めば思考はポジティブになり、やる気も引き起こされます」

ただし、やる気があっても成果が伴わないケースも当然ながらある。モチベーションが空回りしているのだ。

「こういったときは、着実にできることからタスクを仕切り直すこと。ホームランからヒット狙いに気持ちを切り替えれば、意外に事はスムーズに運びます」

一方、気が散ったり、物事に飽きを感じたときは「制限時間」を設けるのが効果的だという。

「先を決めれば段取りよく仕事を進めるようになり、目的に向かいモチベーションも高まります。その際は、一度に100のことをするのではなく2回に分けて50ずつ片付けるなど、細切れに行うのもポイント。一気呵成に物事を進めるのではなく、目標を早めに立てたうえで、休憩も挟みコツコツとやっていくほうがやる気は維持でき、効率的なのです」

また、学んだ内容が身につかない場合。物覚えが悪いとやる気も損なわれる。

「これは、脳への入力が正しく行われていないから。人の話を聞いたりテキストを読んだら、その内容を口に出すことをお勧めします。音読して耳から情報を再入力することで、記憶の定着率は格段に向上します。他者からの話も一方的に聞くだけではなく、その内容を頭のなかで整理して言葉として発するべきです」

脳が持つ特性を理解したうえで、学び、業務をこなしていくことが、やる気の維持に繋がるといえるだろう。