「五感」を刺激することが、やる気にも影響すると述べるのは、リアルディアの前刀禎明(さきとうよしあき)氏。米アップルコンピュータバイスプレジデント兼日本法人代表として活躍し、日本でもiPodを大ヒットさせた立役者だ。同社を退社後にリアルディアを設立。現在は、子供から大人向けまで、工夫を凝らした五感教育のプログラム開発に力を注いでいる。

感性を磨けばやる気は湧いてくる

<strong>リアルディア社長 前刀禎明</strong>●1958年、愛知県生まれ。慶應義塾大学大学院管理工学修士課程修了。ソニーやウォルト・ディズニー、AOLなどを経て、99年ライブドアを創業。同社営業譲渡ののち、2004年に米Appleバイスプレジデント兼アップルコンピュータ代表就任。06年同社退社、08年より現職。http://www.realdear.com/
リアルディア社長 前刀禎明●1958年、愛知県生まれ。慶應義塾大学大学院管理工学修士課程修了。ソニーやウォルト・ディズニー、AOLなどを経て、99年ライブドアを創業。同社営業譲渡ののち、2004年に米Appleバイスプレジデント兼アップルコンピュータ代表就任。06年同社退社、08年より現職。http://www.realdear.com/

「私が常々口にしているのは、『やっぱり、なるほど、ずっと!』と思ってもらえるような人になろうということ。パーソナルブランドを確立させようということです。ただしそれには、自身が成功体験を実感し、周りからも認めてもらう人間になることが前提。実現するには、モチベーションの維持も必要ですね」

前刀氏は、やる気の源泉は「感性、創造力、表現力」と指摘。感性が刺激されれば創造力や表現力も増し、それが前向きで、さらなる成果を求める気持ちに繋がっていくという。

例えばリアルディアでは「色のマジック」というプログラムを子供を対象に行っているが、その効果は絶大だという。

「これは、赤、黄、青の三原色を使い、100色の色づくりから始めて、野菜や果物といったモチーフを見て、触って、においを嗅いで描いていくクラス。最初は戸惑いを覚えますが、たった3色から様々な色をつくり出すことに楽しみを覚え、様々なモチーフを描くようになります」とは、講師を務める“えりな”氏 。さらに子供の場合、固定観念にとらわれず色をつくり出していき、表現豊かでリアルなまでに素材をキャンバスに映しこんでいくのだとか。

「例えばリンゴの場合、大人でしたら赤一色で描きそうですが、子供たちは細部まで表現しようと、様々な色を使ってリンゴを描きます」(えりな氏)

色をつくり出すことで感性が刺激され、創造力や表現力が増す。モチーフを描くことに楽しみを覚えれば、おのずとやる気も生まれる。まさに、五感の刺激がモチベーションの向上に繋がる格好だ。

「このプロセスはビジネスでも同じ。表現力、創造力が感性を研ぎ澄ませ、やる気へと導きます」(前刀氏)

リアルディアでは今後、大人向けにもカリキュラムを提供、ほかにも料理の味わいを言葉で表現するクラスなども開催する予定だ。

「大人がダメなのは、固定観念に縛られているから。真面目なことは結構ですが、過ぎれば逆効果です。違う視点や柔軟な思考を持たないと、壁にぶつかったとき、乗り越えることができません。そのためにも感性を磨き、自分を信じて、自分なりの感覚や方法で物事に取りかかる。そのほうが結果は伴い、やる気も湧いてくるのではないでしょうか」(前刀氏)

前出の築山氏、前刀氏に共通するのは、「日常に適度な緊張感があることがハリになり、モチベーションの維持に繋がる」ということ。やりがいや達成感、自己成長もやる気を後押しするだろう。目的もなく気持ちを前向きにすることは難しく、積極性を生み出すための目的を見つけることも忘れてはならない。

(梅原ひでひこ、松田健一=撮影)