「言ってません」「発言が誤解を生んだ」
言ってしまったことをなかったことにしたい──。誰もがそんなふうに考えたことがあるでしょう。そして、ビジネスで厄介なのは、上司や取引先に、発言や約束をなかったことにされたときです。そんな人たちに翻弄されないためにも、「言ったことを言ってないことにする」手口を学んでおきたいところです。
いちばんわかりやすいのは、完全否定をすること。「言ってません」とひたすらに否定する。政治家の弁明によくある、「記憶にございません」という言葉が典型です。ただ、録音や録画、議事録など、記録に残っていては、完全否定は通用しません。
それよりも、「詭弁」を使う相手のほうがたちが悪い。つまり、「言ったけれど、実はこういう意味だった」と理屈をこねる。最近の政治家は「発言が誤解を生んだ」という言葉をよく使います。どんな誤解だったかは説明せず、とにかく「発言の真意が伝わらなかった」ことにする。完全否定よりも、むしろ詭弁を用いる人を相手にするほうが、コミュニケーションはしんどいものです。
言ったことをなかったことにしたい人間が狙うのが、「一貫性効果」です。つまり、時間と場所が変わっても一貫して「言っていない」と言い続ける。追及したい側も、相手に言い続けられると、「そうだっけ」と、いつしか納得してしまうのです。