必ず年に1回「大病」をする人

仕事に気乗りがしない。そんなときには、疲れていなくても疲れたように見せて、仕事から逃れたい気持ちになることがあるかもしれません。

人は他人のどんなところを見て、その人が「疲れている」と思うのでしょうか。私のクリニックを訪問する「疲れている人」を診察すると、次のような特徴があります。

集中力が落ち、レスポンスが悪くなる。ミスが増え、普段できていたことができなくなってしまう。目が虚ろになる。居眠りをする。声も小さくなる。食欲は低下し、睡眠もうまくいかず、熟眠感が得られなくなる。そのため、週末は寝込んでしまう。また、精神的には、物事をネガティブに考えるようになり、自己否定が強まる。つまり、うつ的な症状が見られるようにもなるのです。

こんな「疲れ」の症状を見事に演じることができれば、「疲れたように見せる」ことも可能かもしれません。

知人から、こんな「仕事ができる人」の話を聞いたことがあります。その人は、必ず年に1回「大病」をするらしいのです。大病といっても、慢性疾患は持っているものの、休むほどの症状があるわけではない。しかし本人は「疲れているし、仕事はできない」と主治医に申告して、診断書を出してもらう。その間に旅行をしたり、リフレッシュの機会にする。その人は、これでむしろよい仕事をして、出世をしたそうです。「疲れ」の見せ方、使い方に長けた、したたかな人だったのかもしれません。

ただし、ふつうの人が疲れたように見せようと演技することは、かえって自分自身を本当にくたびれさせてしまうおそれもあるので、お勧めできません。「疲れ」というものは、自己暗示によってかえって増大してしまうことも少なくないからです。