親子の間柄であれば、親の存命中に連帯保証のあるなしを確認しておくことが大事である。だが、次のようなケースは予測しようがない。
ある夫婦のところに、生前はあまり行き来のなかった夫の叔父さんから遺産が入ることになった。金額は500万円。喜んだ夫婦は、その金で車を買い替え、旅行に行った。すると1カ月したころ、黒スーツにサングラスの男が訪ねてきて、見たこともない名前が書いてある借用書を差し出した。
「実はこの人が夜逃げしましてね。幸い、あなたの叔父さんが連帯保証人になっている。そこで相続人のあなたに、この1億円を返してほしいんですよ」
この夫婦はすでにお金に手をつけている。その時点で遺産を「すべて相続する」と意思表示したことになり、もう相続放棄をすることはできない。夫は頭を抱えたが、後の祭りだった……。
こんな悲劇に見舞われないように、私の事務所では、もしつき合いのない親戚の相続で、相続する金額が数十万円程度であれば、相続放棄や限定承認(プラスの遺産と同額まで負債を相続する)も視野に入れるようお勧めしているのである。
(構成=面澤淳市)