「ワープ」を夢見ない、身の丈にあった成長をするために
「よくそういう記事がありますが、年収500万円の人が年収1000万円の人をうらやむとか。そういう比較と嫉妬も、僕はあまり意味がないと思います」と、菅さん。収入が少ないならその分、それなりの自由や休暇があるかもしれない。人より高い年収は、それなりの長時間労働やストレスの対価だったりもする。そこでどう考えるかが身の丈にあった生き方をできるかどうかで、ただ比較して何が何でも上を目指すのがいいわけではない。自分は何を楽しいと思うかを大事にしたとき、その競争には本当に価値があるのだろうか?
「向上心も使い方次第だと思うんです」と、菅さんはよしもと新喜劇の後輩の話をしてくれた。いつか月収100万円欲しいと漠然と夢を語る後輩に、菅さんはまず「座長がいくらもらっているか聞いたことがあるか?」と尋ねたという。座長のギャラの額と出演回数を知れば、自分が今後どこまで単価を上げ、どれだけ出演できる芸人を目指せばいいのかがわかる。それでも月収100万に満たないのなら、他にどのように仕事や活躍の幅を広げていけばいいか、見通しが立つ。夢は、目標への距離を小さな単位に割って、一つ一つクリアしていくものだ。
宇治原さんも「一年後に京大に受かるためには、今日何をすればいいか、明日何をすればいいか。細かく予定を立てていったとき、これを完遂すればいいんだ、と合格が見えたんです」と語る。500万から1000万を望むのではなく、まずは501万にすることを目指さなければいけない。「みんなすぐに結果を欲しがってワープを求めがちですけれど、人から見てワープに見えるものは、本人はみな積み上げていったものなんですよ」(宇治原さん)。
著書の中で、菅さんは「実力ギリギリの学校よりも、余力を持って成績上位でいられる学校を選ぶのもあり」とも書いている。それは単なる子供の学校選びにとどまらない。われわれ大人にとっても、やみくもに「上を目指せ」と教え込まれた向上心や見栄で自分の居場所を決め込んで苦しむのではなく、本当に自分にとって幸せな「身の丈にあった生き方」をするための、人生の秘訣(ひけつ)なのかもしれない。