人生を楽しむにはどうすればいいのか。ひとつは他人に振り回されないことです。米国公認会計士の午堂登紀雄氏は、自身の経験から「孤独をおそれることなく、素の自分を堂々と出して生きられることが自己実現と幸福につながる」と指摘します。午堂氏は第2子の誕生にあわせてクルマを探した際、「中古の軽自動車」を選びました。その判断基準に、人生を楽しむヒントがあるといいます――。

※以下は午堂登紀雄『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(日本実業出版社)の「『みんなでブレスト』をやめる」(152ページ)を再編集したものです。

自己実現とは自分らしく生きること

「自己実現」という言葉をよく耳にしますが、何もバリバリ活躍することだけを指すわけではありません。

自分の本心に従って生きていくこと、それが許される環境・世界をつくることもまた、自己実現のひとつです。

午堂登紀雄著『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(日本実業出版社)

孤独をたのしめる人は本音ベースで生きています。ありのままの自分でいいと思っているから、ウソ偽りもなく、無理して周囲に迎合することなく、つねに自然体でいられます。それは、自分らしく生きるということそのものであり、「自己」をそのまま実社会で「実現」していることにほかなりません。

ことさら華やかな活躍でなくても、素の自分を堂々と出して生きられることは、自分への自信、自分の人生への信頼感と、将来に対する明るい希望を持つことができる、「幸せ」な生き方と言えるでしょう。

しかし孤独を恐れる人は、この意味における自己実現ができません。ひとりにならないよう、自分を抑えて周囲に合わせて生きているからです。集団からあぶれないよう、自分の思いよりも周りの意見・価値観に配慮して行動するからです。

見た目は華やかで活躍しているような人でも、仲間にちやほやされたいあまり、つねに神経をすり減らしながら気配りをしている人も少なくありません。

これは著名人にもよく見られるのですが、いつもSNSの「いいね!」の数を気にし、「インスタ映え(インスタグラムでの見られ方)」を意識し、他人からの評価のために行動している人は、本当の意味で自己実現はしていないと言えます。

ではどうすれば、この「心の自己実現」ができるのでしょうか。

人生の優先順位を明確にする

その方法のひとつは、「自分にとって本当に大切なことと、そうでないこと」を分別することです。

それは思い込みや社会の常識、他人からの評価ではなく、自分なりの明確な判断基準を持つこと。仮にそれが好き嫌いにもとづくものであっても、その好き嫌いを分かつ自分の価値観を探ってみるのです。

そして、本当に大切なことを最優先し、そうでないことは後回しするか、力を抜くか、そもそも関わらないという判断をする。

そういう「人生の優先順位」を明確にしていけば、大事でないものはあっさりと捨てられる胆力がつくし、もっと大事なことが発生すれば、いまやっていることはスパッと諦めて、そちらに飛び移ることもできる。

すると、その場しのぎでズルズル時間が過ぎるということがなくなる。自分を貫くことで孤独になるかもしれないという恐怖感もなくなります。