Aさんはグッドタイム日誌をつけ、「自分が熱中しているタイミング」と「自分のエネルギーを高めてくれる活動」に着目しました。

すると、Aさんは難しいエンジニアリングの課題にとりくんでいるとき、自分が土木技師の仕事を楽しんでいると気づきました。

逆に、生気を吸いとられ、憂うつな気分になるのは、厄介な人物に対処したり、他人とコミュニケーションをとろうとしたり、管理業務や用事をこなしたりしているときでした。

これをもとにAさんは、自分に本当に合う物事にじっくり注目しました。それがわかると、Aさんはむしろ土木技師の仕事が好きなのだと実感したのです。嫌いなのは、人間関係の問題、提案書の作成、料金の交渉でした。

やるべきことは明白です。好きな仕事をする機会を増やし、嫌いな仕事をする機会を減らす方法を見つけることです。Aさんは周囲にすすめられるままビジネス・スクールに進学するかわりに(そうしていたらきっと大惨事だったでしょう。しかも高くついたはず)、エンジニアリングに努力を集中させることにしました。

そしていまAさんは上級レベルの土木技師・構造エンジニアとして、心から楽しめる複雑なエンジニアリングの問題にとりくんでいます。技術的に価値のあるエンジニアになったので、もう管理業務を頼む人はいなくなりました。ときには、出社したときよりもエネルギーに満ちあふれて帰宅する日もあるほどです。

気づきの視点を得る「AEIOU」メソッド

Aさんのようにうまくいくケースもあります。ただし、グッドタイム日誌もただつけただけでは、そこから貴重な発見を引っぱりだすのは簡単ではありません。そこで、気づきの視点を与えてくれるのがAEIOUメソッドです。

・活動(Activity)
あなたはなにをしていたのか? それは決まった形式をもつ活動か? それとも自由気ままな活動か? あなたは特別な役割(チーム・リーダーなど)を果たしていたか? それとも一参加者(会議のメンバーなど)か? 

・環境(Environment)
環境は心の状態に大きな影響を及ぼす。その活動をしていたとき、どこにいたかを思い出そう。どんな場所だったのか? その場所はあなたをどういう気分にさせただろう?

・やりとり(Interaction)
やりとりした相手は人間? 機械? 新しいタイプのやりとりなのか? おなじみのやりとりなのか? 正式なやりとりなのか? 自由なやりとりなのか?

・モノ(Object)
モノやデバイスは使ったか? そのときのあなたの気分を生みだした(または強めた)モノは?

・人(User)
ほかにその場にいた人は? その人はあなたの体験にとってプラスだっただろうか? それともマイナスだっただろうか?