別居期間は財産分与の対象にならない

離婚の際に男性の取るべき態度について吉田氏は「自分を守ろうとしすぎないことです」とアドバイスする。

「相手に勝とうとして、自分に有利な条件を無理に取り付けようとしないこと。離婚後の目標を最初に決め、その点についてだけこだわり、捨てていいところは切り捨てる覚悟が必要です」

犠牲を払うと腹をくくっても「離婚のコスト」は少ないに越したことはない。岡野氏が「夫婦仲が悪いから離婚話になるわけです。お互いに疑心暗鬼になっていますから、お金をめぐる攻防戦が熟年離婚には顕著に表れます」と強調するように、離婚におけるお金の権利主張は、壮絶になることは避けられない。

まず、第1には離婚時の財産分与の問題がある。専業主婦(夫)の内助の功が認められているため、財産分与は夫婦で等分にするのが原則だ。共働きで、妻の稼ぎが多い場合は、働いている夫と専業主婦が資産を等分にするのと同様、夫と等分にすることになる。

「財産分与は婚姻中にお互いが築いた財産を清算することで、たとえ名義はどちらか一方になっていても、他方の協力があったうえで形成された共有財産となるのが一般的。一方が無職でも、2人とも収入があっても離婚原因がある側からも請求できます」(吉田氏)

主な分与の対象は預貯金、不動産、自動車、有価証券、家財道具などだ。

「夫の退職金も婚姻期間の年数分は共有財産とみなされ、財産分与の対象になります。夫の退職金が出るまで離婚は待ったほうがいいと勘違いしている女性もいますが、定年前でも離婚が決まった時点でいくら払われるかを計算します」(原口氏)

財産分与の対象になるのはあくまでも婚姻関係が成立している期間。別居していた場合は、別居後に築いた財産は対象外となる。いつか妻と離婚しようと考えているなら、婚姻費用はかかるが早めに別居したほうが財産分与は少なくてすむ場合もある。