外国人女性客にとってホストクラブは「カルチャー&観光地」

私がホストクラブに通う理由は、「最先端のカルチャー」がそこにあるからだ。例えば、今や街のお兄さんも着るサテン風の浴衣は、彼らが真っ先に七夕イベントで使い始めたと記憶している。私は『男おいらん』という舞台の脚本を書いたが、それも元々はホストクラブのバースデーイベントでナンバーワンホストが花魁の格好で登場したのを見て、ピンときたからだった。ホストクラブはカルチャーの発信源にもなっているのである。

ホストクラブに来店する外国人女性客の中でも、フランス人はカルチャー目当てであり、彼らのファッションチェックに忙しいという。あちらでも日本のホスト風ファッション誌『メンズナックル』が話題で、ホストはおしゃれで流行に敏感な存在だということが知られているのだ。

「海外のお客さまはホストクラブをひとつのエンターテインメントの場だと感じている方が多いですね。例えばメイド喫茶は外国でもウケがいいんですが、ホストクラブもそうしたジャンルの店だと考えられているのかもしれません。一部の中国の富裕層のかたには大盤振る舞いをいただくこともありますが、多くのお客さまは観光が目当て。日本のマンガに出てくるホストのようなスイートな振る舞いを期待されているようです」(岳野さん)。

2017年2月21日付で通信会社AFPが世界に配信した歌舞伎町のホストクラブに関する記事。
▼なぜ世界の女性はホストクラブに癒やされるのか?

ホストクラブを「イケメンカフェ」と混同している人がいるかもしれない。イケメンカフェにはオプションで「壁ドン」サービスなどがあり、来客は少女漫画の主人公になったかのようなシチュエーションを楽しむことができる。しかしホストクラブの神髄は、イケメンがシャンパンコールなどの芸をすることではない。

女性の話をよく聞き、心の中の寂しさを癒やしたり、頑張った女性を褒めて認めたりすること、つまりディープなコミュニケーションに、客は対価を支払っているのだ。今やホストクラブのホストたちは「色恋営業」をあまりしない。

タバコを吸わず、お酒も全く飲まないホストが次々にナンバーワンになっている。女性を酔わせて甘い言葉で口説き、高額のボトルを入れさせるというような営業スタイルは、一昔前のこととなりつつあるのだ。

とはいえホストたちの収入は指名客が支払った金額によって決まる歩合制であることが多い。だから、彼らはまず女性客に気に入られ、指名を獲得する必要がある。しかし外国人客はほとんどが初回料金のみで帰国してしまう。誰を指名するわけでもないので、このままではホストとしてはあまり利益にはならない。ここが今後の課題のひとつとなっている。そしてもうひとつのネックは語学力だ。