「対話すれば、解決するのではないか」という日本の世論も聞こえてくる。しかしそれは北朝鮮の言い分を聞いていない者の意見である。北朝鮮は日本と韓国とは「核の問題で対話しない」とはっきり宣言している。核兵器を持っていない日本や韓国と核問題で対話する意味はないからである。

公式に攻撃の対象と見なしている日韓米を見ると、対話の機会がどんどん失われていっている。韓国は13年の朴槿恵政権誕生以降、対話はないし、交渉しない「戦略的忍耐」を選んだアメリカは、12年が最後だ。両国とも接触はあっても、政府レベルではない。一方、3国の中で一番対話のコネクションを持っていたのが日本である。しかし内容は拉致問題だけで、核問題は交渉できていなかった。そして16年の核実験を機に、没交渉になった。

こうした近年の動向を理解していれば、対話はできないと考えるのが普通だろう。そもそもアメリカに対して北朝鮮が「やっぱり対話しましょう」と融和の姿勢を示したら、抑止力がなくなるのである。お互い、片手に銃を握ってにらみあう状態で、もう片方の手を使って握手するのは至難の業なのだ。

核抑止力保有の議論が早急に必要だ

この状況で日本は何をすればいいのか。やれることがあるとするなら、ミサイル防衛システム、日本海の沿岸警備など、防衛政策をしっかり築くこと。そして、日本が北朝鮮に対して核抑止力をどのように持つべきか、どう構築するかを議論しないといけない。

今のところ、核兵器に対抗できるのは核兵器だけというのが現実である。相手が銃を持っているのに刀で立ち向かうのがカッコいいと思うのは、戦争の恐ろしさを知らないだけである。戦争の怖さを理解するほど、戦争を防ぐために核兵器を持とうとする。その点、北朝鮮は戦争の怖さをよく知っている。

といっても、あまり選択肢はない。今、日本はアメリカ本土の核の傘の下にあるが、もし北朝鮮がアメリカに対して核抑止力を持てば、アメリカの核の傘が無意味になる可能性がある。日本が北朝鮮の核攻撃を受けても、報復攻撃を恐れてアメリカは北朝鮮を攻撃できないと判断するかもしれない。