30年間「やるべきこと、すべきこと」をした結果は……
「ジャズで歌っているときの自分は、魂が表現することを喜んでいるんです」
Aさんはそんなふうに途中経過をしてくれました。どんどんジャズのボーカルとしての活動にのめり込んでいき、驚くことにサークルに参加してからわずか1年ほどで、ソロライブを開くまでに上達していました。
本業である小学校教諭の仕事にも変化が起こりました。以前はクラスを受け持ち、全教科を教えていましたが、音楽専門の教師として働けるようになったのです。
学校でもプライベートでも、音楽を通じて表現することが柱になったことで、かつて感じていた閉塞感やストレスは徐々に小さくなっていきました。教師の仕事は、子どもだけでなく保護者のケアも必要なので、激務に変わりはありません。しかし、今のAさんには心からワクワクする存在がある。
“ダメもと”で外の世界に挑戦したことが、人生を好転させ、輝かせたのです。ただ、あのまま何もしなかったら……。人生の満足度は残念ながら低いままにとどまったのではないでしょうか。
▼ケース2:どうしてもこのまま定年を迎えたくない大企業・女性管理職(52歳)
Bさん(52歳)は大企業の管理職として長年、貿易業務に携わってきました。50代になり2人の子どもが大学を卒業して独立。子育ても一段落し、定年が視野に入った段階で「今のままの人生でいいのか?」という心の叫びが聞こえてきました。
出世に興味がないわけではありませんが、それよりも「死ぬ前にこれだけはやりたいという生きがいや働きがいのようなものを見つけたい」という願望が強まり、それが抑えきれなくなって相談に来られました。
私は、Bさんに「どんなことに興味がありますか?」「これまでの人生でワクワクした活動はどんなことでしたか?」と尋ねました。
Bさんもなかなか回答が出てきません。ワーキングマザーとして、責任ある仕事のマネージャーとして、多忙な人生を過ごしてきました。「やるべきこと、すべきこと」が中心の30年間だったようです。
その結果、「自分がやりたいこと」を感じるセンサーが鈍くなっていたのです。そこで、私は言いました。
「ふだんの生活や身の回りのことで『○○したいな』と少しでも思うこと、それこそ『今日はイチゴが食べたい』といった小さなことから始めましょう」