しかし、「冬の時代」は長くは続かなかった。2015年下半期から、価格上昇に転じる都市が増え始め、2016年にはまたしてもバブルの泡が膨らんだ。これもまた、前年の下落局面を受けての「反動」と見る向きが強い。

筆者が上海で定点観測の対象にしているマンション(2LDK)の中古販売価格は、2015年9月で480万元(約7200万円)だったのが、2016年9月には850万(約1億2750万円)と、たった1年で77%も上昇した。

2016年は毎日のように価格が上昇。黒板でないと価格対応が間に合わない

しかも、この物件は、不動産バブルの黎明期だった2002年には180万元で購入できた物件である。築20年近い、管理も不十分なボロマンションに1億円以上の値段がつき、2002年比で5倍近くも上昇しているとはにわかに信じがたい話である。

「上海の住宅バブルは崩壊しないのだ」――、こう自信ありげに語る地元民すらいる。確かに内陸の都市では住宅がだぶついているところもあるが、中国の沿海部の大都市では依然、価格は高止まりしている。仮に実体を乖離した不動産価格であっても、3割も4割も下落するようなことがあれば経済はクラッシュしてしまう。「そうはさせない」と市場をコントロールするのがまさに中国政府のやり方である。銀行融資の金利を上下させたり、頭金の割合を増減させたりするのが、コントロールの常套手段だと言われている。

また、中国の「1線都市」と言われる北京、上海、広州、深圳は内陸部の中国人にとっては憧れの地である。そこに住宅を持ちたいという夢が続く限り、1線都市の住宅価格は下がることはないと信じられている。

中国の不動産事情に詳しいエコノミストはこう語る。「富裕層のマネーが国外に流出する昨今、この流れを食い止めるためにも、中国の不動産市場は魅力を維持しなければならない。ましてや、中国政府は住宅価格を下げるようなことはしないだろう」。