IPOか、ミニIPOか

まずはIPOです。IPOによって株式を市場で売却すれば、オーナー経営者は保有株式を減らすことができます。保有割合をどこまで減らすかは本人の考え方次第ですが、格段に株式を相続しやすくなります。

株式市場からの資金調達によって会社は積極的な設備投資ができますし、ストックオプション制度を導入すれば、苦しい時期を支えてくれた社員に報いることもできるでしょう。

『どこと組むかを考える成長戦略型M&A』(竹内直樹著・プレジデント社刊)

難点もあります。上場の基準が厳しいことです。

上場を果たすには、一定の時価総額や純資産額を満たす必要があります。

IRの負担もあります。上場すれば、それだけで最低でも年間数千万円の支出が増えるといわれます。そのコストを考えるだけでも、上場できる企業は限られます。

一方で、ミニIPOではどうでしょうか。効果の点では、IPOとミニIPOは実質的にほとんど変わりません。異なるのは、オープンな市場を通じて不特定多数の機関投資家や一般投資家に売るのか、それとも私的なルートで特定の企業やファンドに売るのかという点くらいです。

前者はパブリックな性格が強く、IR(投資家向け広報)を含めて企業にはさまざまな負担がかかります。また、一般投資家は配当を強く求めるので、経営者は「利益を短期的に出していかなくてはいけない」というプレッシャーに絶えずさらされることになります。

一方、後者はプライベートなので、自社単独で財務諸表をつくって公表する義務はありません。譲渡先企業の理解を得られれば、無理に配当を出す必要もなく、長期的な視点に立った経営も可能です。

まとめると、こうです。IPOとM&Aによる売却で異なるのは株式の売り方や売り先くらいのもので、得られる効果にほとんど差はありません。

そのため、私たち日本M&Aセンターでは、大手企業に株式を譲渡することで自社を成長させる戦略を「ミニIPO」と呼んでいるのです。

IPOとミニIPOの違いについて、もう少し考えてみましょう。