アマチュアの才能を吸い上げマルチで展開する
カドカワは以前から、KADOKAWAの各種フィクションレーベルで有名コンテンツを数々発掘・生産しており、ライトノベルやコミックス、映画などを組み合わせたメディアミックスの手腕を確立していた。さらに2014年10月にドワンゴと経営統合してからは、U30(30歳未満)の若年層に強みを持つニコニコ動画と一緒になったことで、さらにマルチな展開が可能になった。上述の『横浜駅SF』や、2017年上期の大ヒットコンテンツである『けものフレンズ』など、サブカルチャー系で、筆者の周りで話題になる作品は「やっぱりカドカワ」であることが多い。
音楽でもダンスでも映像でもゲーム(またはゲームプレイ)でも漫画でもテキストでも、ニコニコを含むカドカワ傘下のサービスでは、アマチュアがマルチな分野へ投稿できる仕組みがある。投稿に対してユーザー同士の批評コメントが付き、コミュニティーにファンが集まる。そうしたU30のアマチュアの才能を鍛えかつ吸い上げる、というシステムの強さには舌を巻く。
というわけで、余計なお世話と重々承知しつつ、今回の脳内エア会議のお題は「アマチュアの才能を吸い上げ自己増殖をたくらむコンテンツプラットフォーム、カドカワはやがて本当に日本を覆い尽くすのではないか?」です。
川上量生・カドカワ代表、「IPプラットフォーム」を明言する
カドカワの公式ホームページで、川上量生・代表取締役社長は「ネット時代のメディアミックスの進化を実現すべく、IPの創出、IP利用の多重化、メディアの多重化の3つを事業運営における柱」としたという新中期ビジョンを発表している。IPとはIntellectual Propertyの略、「知的財産(権)」のことである。
“インターネット利用が一般的になり、コンテンツはニコニコ動画や「カクヨム」など、ユーザー自身が作品を直接投稿して自由に参加するメディアから生まれ、ユーザーによって洗練されるようになりました。カドカワは、リアルから生まれるもの、ネットから生まれるもののいずれにおいてもIPの創出過程に幅広く関わる触媒となり、時代に合ったIPの誕生を支援します。
IP利用の多重化とは、原作となる一つのIPが、カドカワに蓄積されたメディアミックスのノウハウにより、書籍、映画、アニメ、ゲーム、グッズなどさまざまに形を変え、価値を増すことを意味します。形を変えることで、映画ファン、ゲームファンといった異なる顧客層へのアプローチが可能となり、IPの認知度はユーザーによる多重化を経ながら高まります。IPの楽しみ方が、既にイベントなどリアルの体験にも広がり、コンテンツにゆかりの場所を訪ねるツーリズムへも発展していることには、国境のないネットの発信力や拡散力が関わっています。カドカワは、リアルとネット、いずれの場でもユーザーニーズに応えうるIPの形を実現します。”(会社情報:代表からのご挨拶|カドカワ株式会社)
これは、アマチュアコンテンツの誕生と閲覧からクロスメディア化まで、すべてまとめて面倒を見るプラットフォームシステム、ヒット作の量産システム、あらゆるメディア形態を投入することで国内外くまなくファンを獲得しマネタイズする事業システムを作り上げたという、「一人勝ち」宣言に等しい内容である。