あの勢いはどこに消えたのか

朝日社説はそのぶれを隠すかのように「北朝鮮にとって大きな打撃となるのは間違いない」「北朝鮮経済を完全に窒息させる寸前の内容でとどめたのは、金政権に対する最終的な警告と受け止めるべきだろう」と書く。

当初の「最大限の言葉で非難したい」という勢いはどこに消えたのか。

だめ押しにこうも指摘する。

「『最高尊厳』とあがめる金正恩氏が名指しで制裁を受ける事態を避けたいなら、挑発行動を控えるしかない。戦争状態に近い『最強の措置』の一歩手前に立たされた重大さを、金政権は今度こそ悟るべきだ」

なるほど。朝日社説は金政権にとって「一歩手前」がどれだけ痛いか、そこを強調したいのだろう。しかし読者はだまされてはならない。その大きなぶれを見逃してはならない。

読売も大幅後退の修正案を褒める

「スピード採択で包囲網狭めた」との見出しを掲げる読売社説(13日付)も、朝日社説と同様に大きくぶれている。

たとえばこんなくだりである。

「実験後1週間余りでの決着は異例だ。米国は、厳しい内容を盛り込んだ決議案を即座に作成し、採決日の宣言までしていた。中国と事前に草案のすり合わせを行わず、強気の姿勢で譲歩を迫る手法が功を奏したのではないか」

読売社説は「圧力を強化しなければなるまい」と強調していたはず。それにもかかわらず、決議案から大幅に後退した修正案の採決スピードとアメリカの対応を褒めるのだから読者は肩透かしを食らったのも同然だ。

おまけに「注目すべきは、決議が初めて北朝鮮への石油輸出制限に踏み込んだことだ」とか「米国は草案で原油や石油精製品の全面禁輸をうたったが、中露に配慮して後退させた。それでも、北朝鮮が軍事的挑発を続けた場合に、石油関連の制裁を強化する足がかりを築いた意義は大きい」とまで書く。どうして原案から大幅に後退した修正案を批判し、後退した理由を追及しようとはしないのか。

安倍首相の「これまでにない高いレベルの圧力をかけ、政策を変えさせることが大切だ」との言葉も引用し、「関係国は、制裁体制の抜け穴を塞ぎ、包囲網を狭めるべきだ」と訴える。

読売社説が後退理由を追及しない理由はこの辺りにあるように思える。つまり安倍政権寄りの読売新聞にとって、国連安全保障理事会の採決に賛成する安倍政権には反論しにくのだろう。