「米国の攻撃を招き、破滅につながりかねない」

読売社説の大きな特徴は、北朝鮮に対する牽制である。

まず「米政府は、北朝鮮が米国への核攻撃能力を持つことは、容認しない立場をとる」とアメリカの姿勢を示し、「北朝鮮の核ミサイル問題には、『すべての選択肢』を維持するとの方針に基づき、軍事作戦の実施も排除していない」と明記する。

そのうえで「北朝鮮は、このまま核ミサイル開発を進展させれば、米国の攻撃を招き、破滅につながりかねないことを認識すべきだ」と北朝鮮を牽制する。

中国とロシアに対しては次のように注文する。

「中国が供給制限に踏み込み、北朝鮮への厳格な制裁に舵を切ることが欠かせない」

「プーチン露大統領は、『北朝鮮に圧力をかける政策は誤りで、無駄だ』との考えも示す。日米韓との足並みの乱れを是正することが求められる」

中国は多少まともになってきたようだが、ロシアはどこまでもしたたかである。読売社説がそこを掘り下げないのは物足りなかった。 

「大朝日」のぶれは見逃せない

このように朝日と読売は、社説で厳しい制裁措置を求めていた。ところが、制裁強化の後退が決まった翌13日付の社説をみると、そうした主張が大きくぶれていることがわかる。

朝日新聞の社説(9月13日付)。見出しは「対北朝鮮制裁 決議後の行動が重要だ」。

まず朝日社説。

「北朝鮮による6回目の核実験を受け、安保理は新たな制裁決議を全会一致で採択した」と書き、「実験から1週間余りという異例の迅速さだ。これまで以上に厳しい制裁を盛り、早さと厳格さで国際社会の強固な意思を示したことは評価できる」と続ける。

確かに制裁決議の採択は早かったかもしれない。全会一致の採択でもあった。しかし、それを「評価できる」と新聞の社説として最高のほめ言葉を使って肯定するのはいかがなものだろうか。

前述したように朝日社説は、北朝鮮の6度目の核実験直後の社説で「北朝鮮の暴走を止めるために国際社会は新たな対処を急がねばならない」「中国とロシアは事態の深刻さを直視し、行動すべきである」と主張していたはず。その主張が大きくぶれて「評価できる」とは、開いた口がふさがらない。