なぜ世間は「斉藤由貴」が憎いのか?
政治家や芸能人などの不倫が報じられると、怒る人が少なくない。そのたびに私は強い違和感を覚える。
もちろん不倫の当事者が怒るのは当然だ。たとえば、女優の斉藤由貴さんが、「家族ぐるみでお世話になっている」という50代の医師と熱い口づけを交わしている写真が写真週刊誌『FLASH』(9月19日号)に掲載された。この写真は2人のどちらかによる「自撮り」のようで、これを手に入れられるのは非常に近い人物と推測され、写真を流出させた人物の激しい怒りと復讐願望が透けて見える。
あくまでも推測の域を出ないが、この「自撮り」写真を見つけて、「裏切られた!」と激怒した人物が、復讐のために出版社に持ち込んだ可能性が高い。写真を見つけた時点で相手に怒りをぶつけて問い詰めなかったのかという疑問が湧くが、そうしなかったのだとすれば、より効果的に復讐を果たすためだろう。
私の外来を受診した60代の女性も、夫への復讐をより効果的なものにするために、爆発しかけた怒りを抑え込んだという。
遊びに来た孫がたまたま本棚の奥に隠されていた箱を見つけたので、その中にあったSDカードを自分のスマホに挿入した。すると、夫と不倫相手のツーショット写真がたくさん保存されていて、ショックを受けた。その晩から眠れなくなったが、すぐに問い詰めるようなことはしなかった。
何食わぬ顔でSDカードを箱に入れて元の場所に戻しておいた。その後、何度もSDカードを取り出し、増え続けるツーショット写真を自分のスマホに保存した。もちろん、夫が定年を迎えたら一連の写真を不貞の証拠として突きつけ、退職金の半分と莫大な慰謝料を請求するためで、すでに弁護士に相談しているという。
不倫に怒る人に潜む“不純”な3つの成分
不倫は配偶者を裏切る行為なので、配偶者や子どもなどが怒るのは当たり前だ。だが、当事者以上に世間が怒り、激しくバッシングすることが少なくない。
このような反応を目の当たりにすると、世間の怒りには、不倫は「悪」だから許せないという倫理観だけでなく、それ以外の“不純”な成分も含まれているように思われてならない。
少なくとも、次の3つの成分が含まれているように見える。
1) 否認
2) 羨望=他人の幸福が我慢できない怒り
3) 怒りの「置き換え」