同じような設備やサービスは有料老人ホーム(以下、ホーム)にもあり、比較検討されることも少なくない。だが、分譲マンションは資産として保有できるが、ホームの多くは「利用権」契約で、専用の居室や共用施設、サービスを利用する権利を得るもの。その権利は一代限りで、譲渡できない。また、利用権には法的な裏付けがないため、契約内容によっては途中で退去を迫られたり、事業者が倒産した場合に住み続けられないこともありうる。

シニア向け分譲マンションのメリット・デメリット

シニア向け分譲マンションのメリット・デメリット

それに対し、分譲マンションは「所有権」契約となるため、退去させられる心配もなく、相続や売却、賃貸も可能だ。数千万円クラスのホームと比較し、「子どもに資産として残せるなら分譲マンションを」と選択する人もいるという。

よいことずくめのようだが、購入時には気をつけたいポイントもある。まず、一般のマンションより共用スペースが多い分、販売価格は割高になりがちなこと。月々の管理費や修繕積立金、固定資産税の支払いも必要になる。フロントサービスや緊急時対応などのコストは管理費で賄われる分、高めになることもある。

また、将来マンションを売却したいと思っても、必ずしも買い手がつくとは限らない。今のところ、シニア向け分譲マンションの価値がどう判断されるかは未知数なため、思ったような値段で売れる保証もない。売却できるまでは管理費などを払い続けなければならず、子どもに相続してもこれら費用がかかることは頭に入れておきたい。

テナントに介護事業所が入っていてもそれだけでは安心できない

ソフト面のチェックが肝心!

ソフト面のチェックが肝心!

入居時には比較的元気な人が多いので見落としがちになるが、体調不良や介護が必要になったときの対応も確認しておく必要がある。緊急時対応サービスが付いているなら、具合が悪くなったときに誰が駆けつけ、どんな対応をしてくれるのか、また、医療や介護のサポート体制があるかどうかも確認しておくとよいだろう。

要介護になった場合は、一般のマンションと同じように介護保険の要介護認定を受け、外部(テナントの事業所を含む)の訪問介護などの事業所と契約してサービスを利用する。介護費用は利用に応じた負担となる。

たとえテナントにクリニックや介護事業所が入っていても、必ずしも夜間や休日に対応しているとは限らないので、周辺の事業者情報も収集しておくとよい。また、パンフレットなどで医療機関との連携が謳われていても、一般の患者への対応と変わりないところもある。夜間や緊急時でも管理人らスタッフから医師に相談できる体制がとれているか、また、必要に応じて医師の往診が可能かどうかなど、具体的な連携内容も聞いておきたいものだ。

ただ、軽度のうちは介護保険の居宅サービスなどを利用しながら暮らせても、寝たきりや認知症が進行するとそれだけでは対応が難しくなり、介護施設に移らざるをえない場合もある。たとえ管理人らスタッフが常駐していても、介護を提供する介護施設ではない点には十分に留意しておきたい。

シニア向け分譲マンションは、老いの不安を解消し、快適な暮らしを望む人には一つの選択肢となるだろう。建物や設備のハード面は目で確認することができるが、大切なのは運営などのソフト面。管理やサービスへの不満やトラブルにどう対応してくれるのかも含め、慎重に選びたいものだ。