自宅半壊 4児の父の「逆転の発想」に大きな共感
豪雨、竜巻、台風……さまざまな自然災害が各地で相次いでいる。
天災はもはやひとごとではないが、いざ被災者となれば精神的に追い詰められ、途方に暮れるのが当然だろう。だが、自らが被災者となりながらもある行動を起こした自治体関係者の「逆転の発想」が、今、大きな共感を生んでいる。
その「逆転の発想」の主は、福岡県あさくら市観光協会で働く里川径一(みちひと)さんだ。里川さんは、7月5日、福岡・大分県を中心に甚大な被害をもたらした九州北部豪雨で自宅が半壊。豪雨から5日後の7月10日に生まれたばかりの第4子を含めた家族は今、妻の実家に身を寄せている。
同市は、死者29名、住家被害1014件、避難者431名(いずれも8月10日現在)と被害が大きかった。里川さんが住んでいた黒川地区も道路や橋は崩れ落ち、家屋はつぶれた。行政やボランティアも早々に動き出したが、山から流れてきた流木が道路を妨げ、思うように作業が進まない。
20万トン「災害ゴミの流木に価値をつけられないか」
里川さんは通常業務に加え、仲間たちと農道をふさぐ大量の流木の撤去を続けるうちに、こう考えるようになった。
「処理費用をかけるだけの撤去では復興にならない。災害ゴミにしかならない流木に価値はつけられないものか」
そこで、全部で20万トン以上あるといわれる流木を利用してウッドキャンドルを作り、それを基にクラウドファンディングを立ち上げた。
クラウドファンディングとは群衆(Crowd)と 資金調達(Funding)という言葉を組み合わせた造語。不特定多数の人から共感したプロジェクトに対して資金を出してもらう仕組みを指す。出資はあくまでそのプロジェクトの応援が目的だが、そこに「リターン」と呼ばれるお礼の品がつく。里川さんはウッドキャンドルをリターンにすることで、撤去作業代を地元の人に還元できると考えたのだ。
ウッドキャンドルとは、長さ40cm、直径20~30cm程度の丸太に切り込みをいれ、その切り込みに着火剤を差し込んで燃やす「木のろうそく」。丸太の内側に火がつくので、丸太の円形の切り口に鍋を置いてコンロ替わりにしたり、そのままたき火にしたりできる。