FFG会長の谷正明氏は、叩き上げで、福岡銀頭取職を約半世紀ぶりに日銀OBから奪還した立志伝中の人だ。後継の柴戸隆成氏も福岡銀プロパーで、現在FFG役員は社外の2氏を除き純血だ。財界活動にも消極的で、政治からも距離を置く。十八銀の森拓二郎頭取も生え抜きだ。ある地銀幹部は「あの体制では中央の機微に触れる話は入ってこない。情報過疎だな」と述べる。交渉が難航するなかで、悲劇もあった。16年11月、ある十八銀専務が自宅マンションから飛び降りた。十八銀側は統合問題との関係を否定するが、ある関係者は「心労がたたったとの見方が地元では支配的だ。“東京”に殺されたんだ……」と声をひそめる。

さらに十八銀からは退職者が相次いでいるという。ある関係者は「親和銀が九州銀を合併した際は、人事で九州銀側が冷遇された。十八銀はその再来を恐れている」と語る。県内の消耗戦を終結させるための統合構想が、逆に人材流出を招き、経営体力を蝕む現状は、想定外だったろう。

統合交渉の見通しは暗い。交渉の行方は、同じく県内合併で高いシェアとなる見込みの第四銀行(新潟県新潟市)と北越銀行(同県長岡市)の審査にも影響することは必至だ。万が一破談になれば、地銀再編の流れは一変する。当事者はもちろん、金融庁にとっても引けない戦いであるものの、大きく局面を変える一手に欠けるのが現状だ。

「何とか承認いただけるように最大限努力したい」。FFGの柴戸社長は記者会見でこう訴えたという。それは生みの苦しみなのか、はたまた断末魔の叫びとなってしまうのか――。

(写真=時事通信フォト)
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