取材がないから新聞社説は面白くない

この後、朝日社説は「もうひとつ大きな注目を集めた五輪の計画見直しでも、顧問らがまとめた英文リポートが、知事から国際オリンピック委員会のバッハ会長に手渡されたことがあった。都議会で内容を尋ねられた都幹部は『作成の経緯に関与していない。答弁は控えたい』と言うしかなかった」と書く。

そのうえでまた厳しくこう批判する。

「議論の過程をできるだけ透明にし、結論を出したら、理由も含めて自らの口ではっきり語るのがリーダーの務めだ。この当然のことが小池都政はできていない」

「知事は従来の都政をブラックボックスと呼んで批判した。だがこれでは新しいブラックボックスが生まれただけで、都民への説明責任を果たしていない点で変わりないではないか」

「当然のことができていない」とか「新しいブラックボックス」といった表現はかなりきつい。

もちろん小池氏に反省すべき点はある。しかし新聞業界をリードする立場にある朝日新聞がここまで批判するなら、この件について小池氏の反論を聞き、その弁明を含めて書くべきだと思う。

新聞の社説というのは、相手にまったく取材せずに、自社の新聞記事を読んだだけで大上段から相手に切り込むことが多い。だから面白くないのである。

散漫な批判にとどまる毎日社説

毎日社説も前述の朝日社説同様、手厳しく小池都政を批判している。

「小池氏は『問題提起型』の政治手法を駆使してきたが、個別に課題を見てみると、提起した問題の解決に至っていないケースもある」と指摘し、築地移転問題と東京五輪の計画見直し問題を挙げた後、こう主張していく。

「五輪準備や市場の問題も大切だが、2年目に入る今後は、東京が直面する大きな課題に対して「課題解決型」の都政運営が求められる」

「20年ごろから東京は人口減少が始まり、高齢化が加速する。いまだ解決しない待機児童問題に加え、特別養護老人ホームなどの不足で、施設に入れない『待機老人』の問題も深刻になる。道路や橋、下水道など建設から半世紀以上経過する老朽化したインフラの整備も急務だ」

「子育て支援とともに『老いていく東京』の課題に向き合って、解決の道筋を示すことが重要ではないか」

そして最後に「生活に直結する課題を重視し、都民のための政治にリーダーシップを期待したい」と毎日社説は筆を置く。こう書くところは実に毎日らしいといえば毎日らしいのだが、いくつも課題を挙げ過ぎた結果、社説自体がかなり散漫になっている。