ところで、近年、採用方法にも変化が見え始めた。そのうちの一つが、「リクルーター制度」だ。リクルーターとは、人事担当者以外で、就活生とコンタクトをとる社員のことで、主に就活生と同じ大学出身者や、就活生と年齢が近い若手社員が担当するケースが多い。OB・OG訪問は学生側からのアプローチである一方、リクルーターによる訪問(面接)は企業側からのアプローチとされている。これが、「リクルーター制度」だ。00年代半ばには一時下火になっていたが、再びこの制度が注目を集め始めている。

まず、リクルーター制度は、実際にどのように行われるのか。都内有名私立大学の体育会テニス部出身者が、現場での様子を話してくれた。

「テニス部に人一倍愛着を持っているOBが、卒業後も頻繁に現役の学生の練習に顔を出して、練習に参加したり、コートに立って学生の様子を見ていたりしました。伝統的に、このOBが勤めている某大手銀行には、うちの大学の採用枠があることは学内でも有名。気に入った学生にはリクルーターから声をかけていましたし、一方で学生からリクルーターに自分を売り込むケースもありました」

このようにしてリクルーターが有力な学生を絞り込んだあと、学生はまずリクルーターと1次面接を行い、ほぼ100%の割合で2次面接に進んでいく。リクルーターの“お墨付き”になった学生は、よほどの問題がない限りは順調に役員面接まで進み、内定を得るのだという。

リクルーター制度の利点は、学生の適性と企業とのミスマッチを未然に防げることだ。自身も早稲田大学アメリカンフットボール部出身だというアスリートプランニングの小笠原さんは、次のように分析する。

「リクルーター制度に限らず、体育会出身者の強みの一つには、企業に直結した人脈があります。先輩から、その会社で働くことの利点や、辛い部分など、会社説明会よりもリアルな話を具体的に聞けるので、より現実的な想像をしたうえでその会社を志望することになる。すると、入社後に感じるギャップも減ります。企業にとっては、退職のリスクを減らすというメリットがある。よって、企業内に先輩がいる学生の採用について、ある程度の信頼感を持っているのです」

また、サッポロビールでは、一昨年から事務系総合職で「オンリーワンコース採用」を実施しているという。これは、一つでも秀でた成績や体験を持つ学生への門戸を開いたものだ。「通常コース」という一般的な入社試験とは別にコースが設定され、スポーツ、文化・芸術・学業、社会的活動、異文化体験のうちから選択して、自身の経験をアピールすることができる。

「本年入社の例では、事務系総合職でで採用された45名のうち、10名がオンリーワンコース採用でした。経験として、スポーツの割合は高いですが、企業との共同開発や花火師など、幅広い経験を持った人財が集まっています」(萬谷さん)

入社後に大事なのは成果が出ないとき

最後に、萬谷さんは自身が体育会野球部だったことが仕事にどのような影響を与え、現在のキャリアにつながったと語ってくれた。

「すぐに成果が出ないことでも、続けていれば大きな成果につながるということ、一人では勝てなくても、チームでは勝てる可能性が高まることは、野球部の活動で学び、仕事のなかでも実感していることです。また、日々の基礎練習の積み重ねが、土壇場でのプレーに出るように、当たり前のことを当たり前にきちんと行うことを徹底し、継続し続け、自分の当たり前レベルを上げていくということは、今でも一番大切にしています」

会社で生き残り、昇進していくために必要なのは失敗や挫折しても立ち向かえる強い精神力、そして経験を言語化できる能力があれば就職活動だけでなく、入社後も人気企業のなかで活躍できる。そして、その能力は団体競技ほど養われることがわかった。子供が部活選びで悩んだときには、是非参考にしてもらいたい。

▼アンケート回答企業
あいおいニッセイ同和損害保険、伊藤忠商事、オリックス、鹿島建設、キッコーマン、キリン、サッポロビール、サントリーHD、 JFE HD、損害保険ジャパン日本興亜、竹中工務店、帝人、日本板硝子、日本航空、三菱電機(50音順)
(文=吉田彩乃)
【関連記事】
公務員試験"大学別ランキング"トップ100
将来も食っていける職種・企業の「実名」
"国公立大志願"東大4位で千葉大1位の理由
東京より幸せ「地方の給与1位企業」20社
平均年収1400万円、「開成・灘」卒業生とは何者か