そしてスポーツ推薦をはじめ部活動の記録が特別視される入試形態を除けば、つまりスポーツで高校や大学への進学を考える場合を除けば、部活動が入試に占める比重は小さい。

なぜなら入試は一般に、当日の筆記試験と調査書をもとに合否が判定される(大学受験の場合には、調査書はほとんど意味をもたないことも多い)。部活動というのは、その調査書のなかの片隅に記載される可能性があるだけだ。しかも調査書においては、各教科の成績を示す「評定」が重要な意味をもっている。

もし単に入試に合格したいだけであれば、部活動に費やす多大な時間を、各教科の勉強に費やしたほうが、はるかに効率がよいことになる。そのほうが当日の筆記試験と、調査書のなかで重要な位置にある評定で高い評価を得られるからである。

部活動の入試への影響を明確化すべき

私は、部活動をやる必要がないと言っているのではない(それは、本書『ブラック部活動』の第9章「未来展望図」を読んでもらえればわかる)。そうではなく、部活動が「内申」という不透明なかたちで、生徒を不当に拘束していると主張しているのだ。

一般論として、たしかに入試において部活動の影響はゼロではない。ただしそれは、スポーツ推薦等の特殊な場合を除いて、調査書に記載される可能性がある以上は「ゼロとは言い切れない」という程度の意味である。調査書の記載事項を気にして部活動がやめられないというのは、調査書の影響力をかなり過大評価している。

そうは言っても、これは一般論であり、いま入試に直面している生徒やその保護者は、ぜひ次の2つのことを担任や学校にしっかりと確認してほしい。

すなわち第一に、部活動は当該地域(とくに高校入試の場合)の入試において、どれくらい評価されうるのか。第二に、どの程度(県大会何位以上なのか、全国大会出場なのか)のことを成し遂げれば、それが評価されるに値するのか。

入試における部活動の問題点は、その評価基準が生徒や保護者の間で「見える化」していないことである。部活動への参加とその成績が、入試ひいては人生にかかわるかもしれないという漠たる思いをもっている限り、私たちは部活動を過大評価し、それに拘束されつづける。いったいどうすればそれが評価されることになるのか、それが具体的にわかっていれば、入試を背景にした部活動の拘束力は一気に小さくなるはずである。

そして学校側は、部活動の評価に関する具体的な情報を、しっかりと保護者に説明する必要がある。もちろん、部活動が「自主的な活動」であることとともに、である。

内田 良(うちだ・りょう)
名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。1976年生まれ。名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程修了。専門は教育社会学。日本教育社会学会理事、日本子ども安全学会理事。ウェブサイト「学校リスク研究所」「部活動リスク研究所」を運営。著書に『ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う』(東洋館出版社)、『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』(光文社新書)、『柔道事故』(河出書房新社)などがある。Twitterアカウントは、@RyoUchida_RIRIS
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