ミュージック・ビデオに力を入れる理由
「意図したことではなく、偶然です。最初、ベースは男性でしたが、途中で抜け、新たに女性が加入しただけのこと。でも、結果的に女性ボーカルのパートが増え、バンドのカラーがキャッチ-になったと思います」
個性的な楽曲に加え、ボーカルも男女の歌声で多様性が広がったというのだ。さらに、打首のもう一つの特徴はミュージック・ビデオ(MV)にある。大澤もMVを重視していることを認めて、こう語る。
「最初にMVを作ったのは、2008年。スナック菓子のうまい棒を歌った『デリシャスティック』です」
この時は予算がほとんど無かったため、1コマずつ写真を撮りまくってフォトショップで加工し、つなぎ合わせる“紙芝居”のような作りだった。仕上がりは手作り感満載。しかし、手応えは十分だった。2007年にYouTubeの日本語版がスタートしており、すでにネットで動画をみることは一般的になっていた。
以降、試行錯誤を繰り返し、あるMVが大きな話題を集めることになる。おカネをテーマとした「カモン諭吉」だ。ゲストにはシンガーソングライターの嘉門タツオを招き、1万円札の山をメンバーが手ですくい、部屋じゅうを1万円札だらけにするシーンが印象的だ。
「こんな画がほしいねって話になって、前のマネジャーに『社長に5000万円貸してくれって頼んで』って言ったんです。シャレが通じる社長なので、もしかしたらって思ったから。そうしたら、『2000万円ならいいぞ』って(笑)」
つまり、MVに出てくる1万円札はホンモノ。撮影後は、バラまいたカネを集めるのに一苦労だったという。
「思いきりすくい上げたりしたものだから、電気の笠などに引っ掛かったりしていて、メンバー、スタッフ全員で一斉捜索しました。無事、全部集めて戻したところ、夜中にマネジャーから『治安がいいね』ってメールがきました(笑)」