樋口氏が指揮を執るCNS社は、BtoB事業を主体とするAVCネットワーク社から衣替えをした社内カンパニーである。流通・物流分野のシステムや製造のほか、航空機向けのシステム、エンターテインメントなどを担当している。分野は幅広く、パナソニックの発展のカギを握る社内カンパニーのひとつだ。しかし、2016年度の売上高は1兆407億円、営業利益は296億円と前期に比べて394億円減の減収減益で、多くの事業が収益改善事業に位置づけられている。それだけに、早期に利益を稼げる体質へと変えることが求められている。
「私に与えられた役割は“変革”である。CNS社は旧パナソニック電工および車載系部品を除いたパナソニックのBtoB事業の集合体であり、そこに置いてしっかりとしたビジョンをつくり、変革の方向性を打ち出すことが大切だ。パナソニックとしての位置づけをどうするのか、差別化の源泉はどこにあるのかといったビジネスモデルも定義していかなくてはならない」(樋口氏)
ただ、その変革について「劇薬のようなリーダーが入ってきて変革を行えば、短期的な増益効果はあるかもしれないが、社員に魂が入らないと本当の成果は出ない」と話す。これは樋口氏がこれまでいろいろな会社で経験してきた中でたどりついた結論だという。
「社員が納得する形で『この人が言うことであったら、ぜひやりたい』と共鳴するリーダーがやらなければ、本当の意味での変革はできない」(樋口氏)
ベンダーから問題を解決するパートナーへ
具体的な事業改革の方針については、勝てるエリアや立地のいいエリアを探すことと同時に、差別化できる要素技術を引き続き追求するという。そのうえで、組み合わせでの付加価値を重視し、ハードウェアだけでなく、ソフトウェア、サービス、ソリューションを組み合わせた提案を進めていく。
「最後まで逃げない、販売した後も責任を持つといったパナソニックの企業姿勢を生かしたい。そこに生きる道があると信じている。出来合いの製品を手渡すだけで解決する場合もあるが、さまざまなものを組み合わせて、現地で調整し、定期的に保守までを請け負うところに価値が生まれる。そこにこそ差別化の源泉があり、単なるベンダーから困りごとを解決するパートナーへ変革することを目指す」(樋口氏)
変革の手始めとして、今年10月にはCNS社の本社を大阪から東京へ移す。ちょうど現在本社のある南門真地区が売却予定で、大阪市内に移る計画だったので、「それならば東京に移転したほうがいい」となったそうだ。
パナソニックは創業100周年を迎える2018年度に売上高8兆8000億円を目指している。達成のため、津賀一宏社長が期待を寄せるのが、車載関連とCNS社だ。期待通りの成長ができるかどうか。数々の経験を積んできた樋口氏の経営手腕に注目が集まっている。