そして、自分を客観視できない大企業シニアに、古川さんは苦言を呈する。

「大企業シニアと面談していると、在職中の成功体験を滔々と語り、自分の優秀さをアピールする人がよくいます。でも、大企業は資金も人材も豊富。高い社会的信用もあります。そうした恵まれた条件だからこそ成功できたことを、思い返してください。それに、大きな組織のなかで仕事をしていたわけで、自分1人の力だけでなく、チーム全体の力があったからうまくいったはず。そのときの企業の戦略、企業を取り巻く経営環境もよかったのかもしれません。大企業シニアには諸々の外的要因を排除して、いまの自分にできるスキルを抽出してほしいのです」

人材開発コンサルタントの門脇竜一さんも、「中小企業へ移ると、新しい環境に適応できない大企業シニアが多いですね」と、シビアな見方だ。

「大企業から中小企業に転職したら、年収は半減するのを覚悟しないといけません。6割キープなら御の字ですよ。それが現実だと受け止めてください。それから、大企業と違って、中小企業では何でも1人で仕事をこなさなければなりません。周囲の人に『コピーを取ってきて』などと頼んでしまう悪いクセは、早く直しましょう」

人脈マップで世代の偏りを確認

大企業シニアにとっては、ネガティブな話ばかりが出てきてしまったが、肩を落とすことはない。ほんの少し自己改革をすれば、大企業を勤め上げた能力とスキルを生かして、中小企業でも活躍できる。上田さんは、中小企業に再就職しても「やっていける人になるための6つのポイント」を指摘する。

「1つ目は『過去の肩書だけで威張らない』です。中小企業の人たちも、大企業出身者というだけでは見向きもしません。その企業で何をしてくれるかなんです。空威張りをしても無意味。職場では新米なんですから、何事も謙虚に学ぶ姿勢を忘れないでください」と言う。再就職先でうまくやっていく大前提は、良好な人間関係を築くこと。若い人にも分け隔てなく接し、自分から進んで挨拶したり、話しかけることが重要だ。「相手の名前を覚え、『さん』付けで呼ぶと、一気に打ち解けられますよ」と上田さんは助言する。

2つ目が「無私とロマンと使命感を身につける」で、3つ目は「気に食わぬことがあっても、そのことを気づかせない」だ。中小企業の経営者は我を捨て、社会的な使命感を果たそうと志を高く掲げている人が少なくない。それに対する共感を持つことは確かに大切だ。常に平静な態度を保ち、感情をあらわにしないことも重要だろう。