増える高齢者の無貯蓄世帯 老後資金は大丈夫か?
老後の生活を本格的に意識し始める50代。ここでしっかりと貯蓄できるか否かで、定年後の暮らしは大きく変わる。ファイナンシャルプランナーの八ツ井慶子さんは「50代は人生の最後の貯めどき。老後資金設計をきちんと行いたい年代です」と話す。「50歳以上になると『ねんきん定期便』に老齢年金の見込み額が記載されます。また、退職金の額、子どもの教育費、住宅ローンの残高などいろいろなメドが立ってくる。自分のリタイア後を見据えて、それまでにあとどのくらい貯められそうかなど、プランニングがしやすくなります」
ところが、現実は厳しい。いま、この年代で貯蓄のない無貯蓄世帯が増えているのだ。金融広報中央委員会の調べによると、50代の世帯の29.1%が無貯蓄で、その率はリタイア後の60代、70代になっても変わらない(図1参照)。
「貯蓄のない世帯割合が上昇傾向にあるのに対し、平均貯蓄額は増えていくことから格差の拡大が推測されますが、世帯収入が多くても貯蓄がほとんどないケースもあるなど、実態は複雑です」
いまはある程度貯蓄があっても、安心はできない。給与カットやリストラは日常茶飯事だ。無貯蓄ならば、なおさら早く手を打つ必要がある。八ツ井さんはできることから始めるのが大切だとアドバイスする。
「まずは目の前の家計の見直しが、遠回りのようで近道なのです。老後は急にやってくるわけではなく、これまでの人生の延長線上にある。定年になったからといって消費スタイルを急には変えられません。家計見直しは早いほうが楽です。後になればなるほど大変になります。月2万円でも20年で約500万円、40年で1000万円近く貯まり、あなどれません」
具体的に見ていこう。リタイア期は退職金が入るなど、一般的に人生の貯蓄ピーク時にあたる。老後は年金とともに、その貯蓄を取り崩して生活することになるが、「老後にお金で苦労する人とそうでない人を分けるポイントは3つある」と八ツ井さんは指摘する。