第1は、住まい。賃貸の場合、固定費として毎月一定額が出ていくため、貯蓄の減りが早い。では持ち家なら大丈夫かといえば、そうでもない。マンションだと管理費や修繕積立費に月数万円かかる。いずれにせよ、老後の住宅費を考慮に入れておくことが大事だ。

2番目は食費。高齢になれば食べる量は減っても、健康志向などで高価なものを選びがちで、案外かさむ。特にこだわりの調味料や食品、ぜいたくな食事に慣れていると、老後になっても変えるのが難しく、「食費の見直しは早いほうがよい」と八ツ井さんは言う。

3つ目は、医療費。こればかりは削るのが難しいが、だからこそ「健康は財産」。現役時代から健康管理をしっかりしておきたい。

こうした支出の一方で、リタイア後も収入を得る人が少なくない。会社員の場合は関連会社に勤めたり、現役時代の人脈やキャリアを生かして、取引先から仕事を紹介してもらったりという人は意外に多いという。

「月に数万円でも収入があると安心感が増します。そうした働き口があるかどうかは、それまでにどういう人間関係を築いてきたかに左右されます。いろいろな意味で、定年は人生の総決算だといえるわけです」

勉強代覚悟で実践することが大切

収入面でいうと、資産運用も一つの手だ。ただし、「あくまでも余裕資金の範囲内で」と八ツ井さんは注意する。

「余裕資金とは、当面使わないお金のことです。生涯のキャッシュフロー表をつくるとわかりやすいのですが、たとえば90歳まで生きると仮定して、いまある貯蓄を取り崩していっても、余るお金。仮にそれが500万円として、その500万円がなくなっても家計が破綻しないというのが余裕資金です。その余裕資金のなかで、本人のリスク許容度に従って投資に回します」

運用といっても、初心者にはハードルが高い。そこで八ツ井さんが勧めるのが座学と実践の両輪による勉強法だ。

「いろいろな本を読んだり、セミナーに参加すると同時に、実際に運用してみることが大事だと思います。投資すると、本にはさらっと書いてあることが腑に落ちる。やはり実際にやってみると違うんですよね。私もかなりの勉強代を払いました(笑)」