普通の競争が行われている状況であれば、一番正直に顧客満足が現れるのは長期利益だ。儲かっていないのに客が満足していたら、どこかに嘘があることになる。利益があるからこそ、雇用があって給料が出せるのであり、逆はない。また、企業ができる社会貢献の最たるものは納税だ。
ファストリの経営方針は「儲ける」の一言
しばしば、日本のROE(自己資本利益率)は5.3%と、米国の22.6%、欧州の15.0%に比べて低く、原因は長期の継続経営を求めることにあるとされる。だが、ROEを分解してみると日米欧の総資本回転率と財務レバレッジはあまり変わらない。日本は儲け(利益率)が少ないことが問題なのだ。
たとえばファーストリテイリングの経営方針は「儲ける」の一言だ。「儲ける」はどの会社にも当てはまる言葉で、これ以外の方針は、商売ではありえない。まともな人が、まともな商売をやって、まともな論理で考えれば行き着く原理原則である。
会社はいろいろな事業が入っている器であって「企業=事業」ではない。商品・サービスがあり、お客さまがいて、競争相手としのぎを削るというのは、事業のレベルで起きていることだ。会社というのは僕の視点からするとフィクションだ。上場など事業の入れ物としての会社は必要だが、稼ぐ力のリアリティは事業にある。事業が「主」であり、会社が「従」であるという主従関係が、稼ぐ力を見るためには極めて重要である。
フィクションたる会社が前に出すぎると、主従が逆転して個別の事業の稼ぐ力はないがしろにされてしまう。最近では、重厚長大でも会社の事業構成が変わってきた。そのベストケースは日立である。日立のV字回復は、本社レベルでいろいろな事業構成に手を入れたことにある。ただ、本社が頑張ったことと、事業は別問題だ。本社はマイナスをゼロにしただけで、これからプラスにするのは事業レベルの稼ぐ力にかかっている。