カーシェアリングの市場が拡大している。公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団による2017年3月の調査によると、国内のカーシェアリング車両台数は約2万4500台(前年比24%増)、会員数は約109万人(同28%増)。12年が約6500台、約16万8000人だったことから考えても、急速な成長市場といえる。
そんななか、アウディジャパンがDeNAのカーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」と仕掛けたキャンペーンが話題を呼んでいる。アウディの新型車A3を、カーシェアリングで無料体験できるというもの。国内の自動車メーカーとしては初の試みだ。
「予想以上に大きな反響でした」。アウディジャパンの斎藤徹社長は、驚きを隠さない。今回のキャンペーンにアウディが積極的だった背景には、斎藤社長が近年抱いていた「危機感」があったという。「いま、お客様の『ディーラー離れ』が深刻なのです。何度も試乗して購入を決めるのではなく、ネットで下調べをして、最後だけ乗って確かめるという購入行動に変わってきている。成約率は高いが、我々が知ってほしい乗り心地などを試していただく機会が減ってしまった。特に、我々がより魅力を伝えたい若い世代のお客様にその傾向は顕著です」。そこで若者の利用が増えるカーシェアリングは、有効というわけだ。
今回のキャンペーンは5月末で終了したが、Anycaに登録すれば、1日1万円前後で個人所有のクルマを借りることが可能だ。サイトを覗くと「一生に一度は乗ってみたい車」というコーナーがあり、アウディA8などの超高級車も登録されている。いまや2000万円以上の外車がカーシェアリングで1日1万円で乗れる時代なのだ。
ただ、斎藤社長は「日本で具体的なビジネスにするには課題が多い」という。海外に目を向けると、アウディの各国法人はシェアリング事業に積極的に乗り出している。ドイツでは空港など公共の場所をステーションに、アジアでも香港では2000戸を超える集合住居でサービスを提供している。