高級車市場で厚いジャーマン3の壁

レクサスの2016年販売台数はクローバルで前年比4%増の67万台超と、過去最高を4年連続で更新している。日本国内でも5万2150台と初めて5万台を突破した。また、福市プレジデントが「この国の人たちに乗ってもらえるようになったらレクサスも本物」と話しているドイツでも順調に販売を伸ばしている。

ただし、2016年のドイツでの販売台数は2500台弱(前年比46.0%増)でシェアは0.07%。「ジャーマン3」のメルセデス・ベンツは9.3%、アウディは8.6%、BMWは7.8%と、まだまだ差は大きい。日本国内でも、メルセデス・ベンツは2016年に6万7386台を販売しており、レクサスは5万2150台なので、約1万5000台の差をつけられている。

2010年~12年の3年間はレクサスがメルセデス・ベンツを販売で上回っていたが、2013年以降は4年連続で後塵を拝している状況だ。両社の差は13年6959台、14年1万6593台、15年1万6931台で、昨年は広がる差をようやく縮めたが、「打倒メルセデス・ベンツ」の壁は厚い。

クルマの品質では、すでにレクサスはジャーマン3を上回っている。米J.D.パワーの「自動車耐久品質調査」では、レクサスは6年連続で1位を獲得しており、ジャーマン3を凌駕している。それでも勝てないのはなぜか。福市プレジデントはこう話す。

「レクサスは1989年にスタートし、わずか28年の歴史しかない。ジャーマン3は止まっていてもメッセージを出せる。それはそこに込められた過去の長い歴史やストーリーがあるからだ。われわれも挑戦者としてストーリーをつくっていきたい」

これまでレクサスはそうしたストーリーをつくるために、発表会でさまざまな演出をしてきた。14年の「NX」では東京タワーの下でクルマを泡まみれにして走らせた。また15年の「RX」では会場にリングを設置してプロレスのショーをした。ユニークな演出を評価する声もあったが、筆者には肝心のクルマの存在感を薄れさせるだけだったように思えた。ただ、今回はそうした派手な演出はなく、4台のクルマを並べて、じっくり見られるようになっていた。豊田章男社長が連呼する「いいクルマづくり」への自信を感じさせる演出だった。

「このLCはわれわれの新しい時代を象徴するモデルになる。人々を移動させるだけでなく、五感も動かすクルマだ」と福市プレジデントは話す。

試行錯誤の末、ようやく見つけ出したレクサスの新しい道。感性に訴えるクルマづくりでジャーマン3に対抗する。今後のレクサスの動向には目が離せない。

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